去る7月16日に発生した新潟県中越沖地震では、いくつかの問題が浮き彫りとなった。
まず、大都市、地方中核都市とは言えない規模の地方都市を地震が襲った点である。およそ地方都市は全国にあり、いつ何時災害に見舞われるとも限らない。柏崎市の復興プロセスは多くの地方都市のモデルとなる。原子力発電所の至近で地震が発生した初めてのケースであり、今後のエネルギー政策において、地震とどう向き合うかという新たな課題が示された。また、中越地震同様に国の根幹をなす輸送ルートが断絶した。運輸行政・社会資本整備等、国家的な課題は国が責任を持って対応することの必要性も明らかとなった。
これらの課題を前に、どのような視点から地域づくりを考えていかなければならないのか、今回の「北陸の視座」は、長岡造形大学 建築・環境デザイン学科教授・平井邦彦氏、(財)国土技術研究センター理事長・大石久和氏にお話を伺った。
平井氏は、まず、被災した柏崎市は典型的な地方都市であるが、それが震災復興や地域政策上どのような意味を持つのか説明された。また、今回初めて問題として浮上した2つの事柄を紹介された。そして、時代の流れを加速させるという大災害の特質を踏まえ、どのような復興のデザインが必要か説明された他、災害が頻発した北陸の知恵やノウハウを全国に広めることの必要性を強調している。
大石氏は、ご自身が提唱する「国土学」の考え方を紹介された。国土の成り立ちを知るとともにその将来を考え、国土に対して何をすべきか明らかにする「国土学」の考え方が必要な理由を説明し、次いで、わが国の国土形成上の特質から、社会資本は堅固なものが求められ、その整備に多くのコスト・時間を要することを紹介された。
また、今日の私たちの生活は先人が創り上げた社会資本上にあることや、強い国づくりのために北陸は何をしなければならないかを示唆された。
北陸は、自然・地形等の条件もあって、常に災害の発生と隣り合わせの地域である。それゆえ、地域経営上、防災や災害からの復興は重要な課題といえる。また、災害経験の多い北陸が、そのノウハウを蓄積・提供することは、日本のあらゆる地域にとって役立つ情報となる。例えば、中越・中越沖の2つの地震からの復興プロセスをモデルとして示すことができれば、それは国内外の多くの地域で応用できるだろう。住みよい地域・国を創り上げていくため、北陸はその経験を活かすための知恵を集めなければならない。
(北陸の視座・編集事務局)