昨年のことだが、航空会社から福岡〜富山線と福岡〜新潟線の廃止が打診された。搭乗率の低迷がその理由で、前者は廃止されたのに対し、後者は便数を2往復から1往復に削減した上で暫定運行されることとなった。それを受け、官民一体となった利用促進の活動が繰り広げられているものの、搭乗率の改善にはなかなか結びついてはいない。前途は相当に厳しいものがある。
こうした動きの背景には、採算性を重視し、利用の見込めない路線は切り捨てるという発想がある。これまでは、羽田〜伊丹線と千歳・福岡線といった基幹路線の収益を不採算路線の維持に充当し、内部補助で全体のネットワークを構成してきた。ところが、新規航空会社の参入で基幹路線においては運賃競争から収益が低下、さらに昨今の燃料費高騰が追い打ちをかけ、地方路線の廃止が取り沙汰されるに至った。
航空に限らず、公共交通においては地方都市における路線の廃止・縮小が顕著である。人口減少、少子化、過疎化といった社会情勢がその一因となっているのも想像に難くなく、やむを得ないという見方もできるし、効率の追求やコスト縮減は当然必要な視点である。ただ、中には廃止後の代替交通の確保が著しく困難となっているケースもあり、昨今の流れは利用者を軽視している側面もある。
今号では主として公共交通の運営における新たな視点や考え方を参考に、地域の足を守るため、地域の住民は何をすべきか紹介した。たが、そもそも交通機関とは、乗ること自体は目的ではない。移動という目的のため、派生的な需要に応じるためにあるものだ。そうした観点に立てば、公共交通を維持していくためには、その移動の目的をいかにして作り出していくかといった点についても考えていかなければならないといえる。
折しも首都圏への人口流入が、顕著となっている。昨年は転入者数が転出者数を約15万人上回ったが、これはバブル経済の好況に湧いた1987年以来、20年ぶりだという。住宅や通勤事情のよくない首都圏志向が強まるのは何故か。やはり、雇用環境や娯楽の多さなどにおいて首都圏が勝っているからだろうか。
今後を概観すれば、7月に迫った東海北陸自動車道の全線開通や2014年度に予定される北陸新幹線の金沢開業が控えている。これらは、中京圏や首都圏と地方との関係を強める一方で地方都市間の関係を疎遠にする可能性がある。総合的な交通体系整備、東京中心のインフラ整備は社会的要請であるが、同時に地方の自立や地域間連携の促進、広域なネットワークの形成が地域づくりの主要なテーマである中で、それに逆行するような要因が働きかねないことをも意味する。
北陸はこうした事態を傍観するだけでいいはずがない。例えば、東海北陸自動車道や北陸新幹線をうまく活用すれば、岐阜県や長野県と北陸という新たな連携やネットワークを構築する可能性がある。地域固有の資源を活用した観光の振興や地域ブランドの創出などはもとより、新たな動きを想定しながら、常に今何が必要か、何をすべきかを考えていかなければならないだろう。北陸の真価が今こそ問われている。
今号の地域指標1・2では、プロジェクトI「北陸地域における北東アジアとの経済連携の調査研究」、同Ⅱ「北陸地域の自立に向けた方策の検討」の活動成果を概要版として掲載しました。報告書(本編)をご入用の方は、お手数ですが(社)北陸建設弘済会 北陸地域づくり研究所にご連絡いただければ、お送りいたします。
(北陸の視座・編集事務局)