現在やや調整局面にあるとはいえ、これまで高成長を続けてきた東南アジア経済圏に対して、北東アジア経済圏は明暗2極に分かれたままのアンバランスな経済成長が続いている。一方の極に中国東北部や韓国があり、他方の極には極東ロシア、北朝鮮、モンゴルのように成長の軌道にまだ乗り切れない移行過程の国々があり、1人当りの所得格差はやや拡大の傾向にあった。この明暗2極に分解したアンバランスな発展パターンは域内の貿易や投資の交流を阻害してきた一方、日本経済自体にとっても日本海沿岸地域の太平洋ベルト地域への過度の依存という不均衡な経済成長を余儀なくさせてきた。今や脱冷戦の時代となり、世界経済は大競争の時代に入りながら、環日本海の地域内経済交流はようやく近年動き始めたばかりであり、日本経済に対する北方からのインパクトはまだ依然として弱い。しかし長期的展望のもとでは、本報告書に見るように、多くの選択肢が開けている。
本報告書はこの北東アジア経済圏全域の発展の可能性に対して日本経済が果たす役割、さらには日本海沿岸の道府県―特に主要拠点である新潟県経済圏の意義と今後の開発に関する選択肢について計量モデル分析を行い、最後に政策的提言を行う。