国土地理院発行の5万分の1地形図から、土地利用分布を判読した。用いたのは、明治44、昭和6、27、45、55、平成12年の各年である。
その結果、昭和27(1952)年以降、湿田の乾田化が進んでおり、同時に市街地化が進んでいることが確認された。
図4.1.1(1)明治44年
図4.1.1(2)昭和6年
図4.1.1(3)昭和27年
図4.1.1(4)昭和45年
図4.1.1(5)昭和55年
図4.1.1(6)平成12年
土地利用面積をみると、昭和27年から昭和45年にかけて、乾田化が進むと同時に、湿田・沼田等が消滅している。氾濫が減少し水が抜けやすくなったこと、土地改良の進展、ポンプ排水の実施等によるものと考えられる。
表4.1.1 土地利用面積の変遷
明治44年 | 昭和6年 | 昭和27年 | 昭和45年 | 昭和55年 | 平成12年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
市街地・集落 | 2,944.89 | 2,958.07 | 2,993.74 | 3,724.02 | 5,002.30 | 6,301.68 |
乾田 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 23,207.74 | 21,953.41 | 19,765.18 |
畑・果樹園 | 354.50 | 354.65 | 351.85 | 845.16 | 817.66 | 1,083.08 |
湿田 | 22,235.60 | 16,993.27 | 17,519.62 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
沼田 | 0.00 | 5,690.93 | 5,191.83 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
湿地 | 230.19 | 172.61 | 257.79 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
水面 | 576.07 | 562.64 | 278.85 | 8.94 | 1.57 | 0.00 |
その他 | 1,331.31 | 1,013.03 | 1,159.09 | 32.13 | 43.06 | 692.63 |
合計 | 27,672.57 | 27,745.19 | 27,752.79 | 27,818.00 | 27,818.00 | 27,842.57 |
単位:ha
図4.1.2 土地利用面積割合の変遷
信濃川流域の平島(へいじま)、中ノ口川流域の金巻(かねまき)の2地点における洪水位(その年の洪水時の最大水位)をみると、大河津分水路の完成後、低下していることがわかる。信濃川中下流域・中ノ口川流域の災害回数は大河津分水路完成前(明治元(1868)年〜大正11(1922)年)で31回だったのが、大河津分水路完成後(大正12(1923)年〜昭和45(1970)年)に6回に減少しており、新潟県下においてどこの地域よりも大河津分水の完成により対象地域の災害回数が大きく減少していることがわかる。
図4.2.1 大河津分水通水前後における信濃川の洪水位の推移
出典:西蒲原土地改良史
図4.2.2 信濃川の洪水発生回数の推移
出典:新潟県農林部「新潟の米百年史(昭和49年出版)」
西蒲原郡の単位面積あたりの米収量は、従来長岡地区程度であった。しかし、大河津分水路の通水開始後は、長岡地区を上回るようになり戦後もその状態が続いている。このことから、大河津分水路により沼田・湿田が減少し単位収穫量が大幅に増加したものと考えられる。
図4.2.3 対象地区(西蒲原郡)およびその近隣郡の水稲収穫量の推移
出典:新潟県農林部「新潟の米百年史」
工業の発展をみるため、大河津地区の工業地区面積と燕・三条地区の金属器の出荷高を長岡地区と比較した。なお、大河津地区は表2.1.1の西蒲原地域と同一、燕・三条地区は旧燕市、三条市、分水町、吉田町であり、当初ほとんどが湿田であった地域である。ここでは資料出所が異なるため表記も異なる。
大河津地区の金属器の出荷高は、大河津分水路通水以後、戦後の一時期を除いて1980年頃まで上昇を続けている。また、長岡地区の出荷高と比較すると、大河津分水路完成以前ではあまり違いはなかったが、完成後には長岡地区を上回るようになっている。
また、大河津地区の工業地区面積は、当初ほぼゼロという状態であったが、その後急速に拡大し現在は長岡地区を上回っている。同時に、この地域における鉄道・道路の整備も進んでいることから、大河津分水路の整備によって利用できる土地面積が増加したことで交通網整備が促進され、これらの相乗効果により、工業の発展がもたらされたものと考えられる。
図4.2.4 金属品出荷高の推移
出典:「新潟県統計年鑑」(1950年まで)、「工業統計表」(1960年以降)
表4.2.1 対象地域における鉄道・道路・工業地区整備の変遷総括表
※鉄道路線延長は、国土地理院発行の5万分の1地形図「新潟」「新津」「加茂」「内野」「弥彦」「三条」6図郭より国鉄・JR路線について集計。
※道路延長は、国土地理院発行の5万分の1地形図「新潟」「新津」「加茂」「内野」「弥彦」「三条」6図郭より一般国道・自動車専用国道・高速自動車国道について集計。
土地評価額と地積を整理し、土地全体に対する宅地の占める割合を算定したところ、大河津地区における宅地の占める割合が、大河津分水路完成後、長岡地区より相対的に大きくなっていることがわかる。また、宅地の評価額も、同様に大河津地区が長岡地区を上回っている。
図4.2.5 宅地面積が土地全体に占める割合
出展:新潟県統計年鑑
図4.2.6 宅地の評価額の推移
出展:新潟県統計年鑑