国土学からみた北陸の地域づくり(下)

ネーミングライツ(命名権)を地域づくりにどう活用するか ネーミングライツの研究

平成17年から急増
大都市から地方圏へと拡大

平成15年にはもう一件、神戸市が「グリーンスタジアム神戸」(野球場、当時オリックスの本拠地)の命名権を販売し、ソフトバンクが応募して「ヤフーBBスタジアム」と改称している。平成16年には横浜市の「横浜国際総合競技場」がネーミングライツを導入し「日産スタジアム」へ、また東京都の「東京国際フォーラム ガラス棟」が文化施設としては初めて導入し「シャネルルミエール」と改称した。ただ、件数は2年間でわずか4件にとどまっており、日本でネーミングライツ導入の動きが活発化するのは平成17年以降のことだ。

仙台市や大分市など首都圏や関西圏以外にも拡大して、全国で10の施設がネーミングライツを導入している。平成18年にはさらに増加し、主な事例だけでも24件、平成19年には19件と日本に浸透・定着してきていることがわかる。

またここ数年の特色として、ネーミングライツを導入する地域の拡がりと施設の多様化傾向があげられる。

ネーミングライツは施設等の命名権を企業に販売することで、施設の所有・運営者は毎年安定的な収入が確保される。一方応募した企業は、看板や地図、マスコミでの報道など様々な場面で企業名が社会に発信されたり、その施設を利用するファン層や地域での企業イメージを高めるという広告効果を期待している。

双方にメリットがある点で「Win-Winの関係」といわれているが、契約する企業にとってはお金を支払う(投資する)以上、ビジネスとしてより大きな効果を期待する。そのため入場数が多い施設、テレビや新聞等によく登場する施設が契約する際の重視点となることから、首都圏や大都市のスポーツ施設がネーミングライツの中心を占めていた。

しかし、スポーツや文化施設の赤字の影響は大都市圏よりも地方の方が大きい。そこで地方圏の自治体が次々とネーミングライツの導入を検討・実施し、苦戦しつつも少しずつ契約を増やしているのが現状だ。

さらにスポーツから文化へ、そして交通施設へと対象施設も拡がっており、最近ではスタジアム等のゲートや公営競馬のレース、公園のベンチなど対象が細分化し、ユニークな発想のネーミングライツの例もみられる。(表2)

表2 スポーツ・文化施設以外のネーミングライツの例

施設名 地域 ネーミングライツの導入施設
カシマサッカースタジアム(ゲート) 茨城県 スタジアム内の4つのゲート
地方公営競馬(レース) 名古屋、高知他 競馬のレース名を販売(「佐藤一郎記念」など)
都立公園、都立霊園の「思いでベンチ」 東京都 公園・霊園内のベンチの寄贈者を募り名前入りプレートを設置
甲子園球場(年間シート) 兵庫県 新設される「フィールドシート」(ファウルグランドにせり出した観光席)の命名権を販売
富山ライトレール(停留所) 富山県 LRTの停留所名にネーミングライツを導入
えちぜん鉄道(新駅) 福井県 新しく設置される駅名にネーミングライツを導入

※新聞記事等より編集部が作成

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