施設運営者にとっては安定的な収入が得られる点で有効なネーミングライツだが、問題点や課題がないわけではない。最近の事例等を含めて次のような留意点があげられる。
大都市圏の施設ほど利用者やビッグゲームが多く、企業は広告効果を見込んで応募しやすい。一方、地方の施設は広告効果が低いと評価されている。また体力のある地元企業も限られる。
「文化会館」や「野球場」といった名称が削られることが多くなり、どのような施設か分からなくなる恐れがある。また「大阪ドーム」が「京セラドーム」に変わった際に大阪にあること(場所)が分からなくなると論議を呼んだ。(現在は「京セラドーム大阪」)
アメリカでは20〜30年という長期契約が一般的だが、日本の場合には3〜5年の契約が多い。施設名が頻繁に変わると利用者の混乱を招き地元の施設として定着しづらい。
広島市民球場がネーミングライツの導入を検討したが、「市民球場」という名称に愛着を持つ市民が多く反対多数で断念した事例があった。
県営宮城球場は、平成17年に人材派遣業のフルキャストと3年契約を結び、「フルキャストスタジアム宮城」と名前を変えたが、平成19年に発覚した不祥事で契約を解除。新たに日本製紙と契約を結び「日本製紙クリネックススタジアム宮城」とすることとなったが、平成20年の古紙配合率問題で企業名をつけず「クリネックススタジアム宮城(Kスタ宮城)」とすることになった。このように契約した企業によって施設のイメージが大きく揺れるケースがある。
以上のほか、冠のついたスタジアムでは同業他社や異業種企業の主催・後援・協賛するイベントは敬遠されることが多いといった問題点もある。