中核市・新潟

新潟市の持つ「四つの顔」、この強みを活かして発展していくまちに

目黒 剛((財)新潟経済社会リサーチセンター理事長)

目黒 剛(めぐろ つよし)
写真:目黒 剛

(財)新潟経済社会リサーチセンター理事長。

新潟経済同友会専務理事。官立(旧制)新潟高等学校文科一年修了。第四銀行取締役営業副本部長兼営業推進部長、常務取締役、監査役などを経て現職。

「港町」という位置づけで、これからどうあるべきかを考える

どうも新潟の顔がはっきりわからないという声がときどき聞かれる。これは経済界もそうだし、行政の方からもよく聞かれる話である。しかし私はむしろ、新潟は多様な顔を持っているところが強みであると考えている。

新潟市は「四つの顔」を持っているといえると思う。ひとつめは関東、首都圏の顔である。もちろん北陸の顔も持っているし、さらに東北の顔も持っている。そしてもう一つは、環日本海の中核という国際的な顔である。この四つの顔を持っているということは新潟の大きな強みである。その強みを具現するためのインフラ整備が、これからの中核市構築の大きな課題であるといえるだろう。インフラ整備の一つは、空港や港湾であり、もう一つは道路である。四つの顔を発揮するには、これらが極めて高いインフラとなるだろう。

基本的には新潟全体が極めて重要な港町であるという位置づけで、いろいろなインフラ整備、行政展開、経済界の展開がなされるべきだろう。そのように考えると今の港、空港、道路で21世紀をはたしてもちこたえられるのだろうか。21世紀を目前にして全体的な見直しをしていくべきではないだろうか。既にさまざまなプロジェクトも始まっているが、多方面で議論をして21世紀の構築を今から行っていく必要がある。

拠点機能をいかにして新潟市に集中させるか

新潟市は現在、他が羨むほどインフラが整備されているにも関わらずそのメリットを十分に使い切っていないという指摘がある。これは、新潟の中で物事を結節する力がまだ足りないことに起因するのではないか。例えば、貿易で随分と経済活動がなされているが、まだまだ商社まかせであるという部分が非常に大きい。人の流れでも、どうもまだ新潟の中で束ねられていない。そういうものを新潟市にいかに集中させるかというところが新潟地域そのものの課題であると思う。たとえばこれから開発されようとしている万代島のなかで、国際交流拠点形成の一つの手がかりとして、貿易であれば国際貿易センターというようなものを作ってそこに物事を束ねる力を構築し、それをまた経済界に進展させる発信基地にしたらいいのではないだろうか。万代島再開発にあたっては、是非ともそういった機能が設けられることを期待している。

それから、新潟を含め、近県の群馬や長野、福島でも東京ばかりに目を向けていたきらいがある。物流、人流も全部横浜港、東京港あるいは成田、羽田しか通っていない。これもポスト四全総の課題だが、そういう一極集中を排除することが、コストあるいは時間コストということを全体として考えた場合、これからの国民経済的なメリットになるのだろうと思う。そういう視点からソフトの面でも見直しをしていくことが必要になってくるだろう。

新潟には「四つの顔」を持つにふさわしい風格のある都市なってほしいと考える。例えば都市公園一つ見ても金沢や仙台、札幌では都市公園が非常に多く規模も大きい。緑が豊かだということは都市の顔の品格を一番正直に表す形であるともいえる。新潟が国際的な顔を持つには、そういった豊かな気品のある顔つきをしている必要があるだろう。新潟市が購入した新潟駅南口の土地も、是非緑豊かな空間を伴った拠点性のある開発をしてほしいと期待している。

また、都市公園ばかりでなくて「町角の美学」というようなものが都市の風格を表す大変有力な手段だと思っている。町の植栽をキメ細かに展開していくとか、空き店舗にも緑の植栽を置いてちょっと憩いの場所を作るといったようなことが豊かな市民生活にもつながるのである。そういう町角の美学というものを新潟はもっと心がけていいのではないだろうか。例えば他にも、最近の空港は花を植えたりきれいな植栽をしたり、どんどん公園化してきている。新潟空港はまだやっと滑走路の2500メートル化にあわせた新しいターミナルビルができたばかりなので、そういった部分はこれからの課題となるのだろうが、将来、国際的な新潟の顔づくりを行うために、これからいくつかの具体策を展開していかなければならないだろう。

キメ細かい道路整備と、風格ある街に向けての開発が必要

新潟は城下町でないから風格のある町が形成できないということがよく言われるが、逆をいうとこれから我々が新しい城下町をつくるんだという意気込みで取り組むべきだということになるのだろう。これから県庁の脇に国の施設が移転してくる。その跡地が空いてくるはずなので、活用について今から考えておく必要があると思う。それが単にスーパーだとかマンションだとかの開発にとどまっていると風格ある町並みにならない。いかにも経済原則だけが生きている町になってしまいかねないのである。

文化の面でいえば、例えば新潟は漫画家を大変輩出していることから西大畑あたりに漫画の殿堂のようなものを作ったらどうだろうか。会津八一などいろいろと伝統的な文化もあるわけだが、そろそろ新潟の新しい、回遊性を持った文化、殿堂というものを形成していく時期ではないかと思う。

それから中核都市としての大動脈を考えるときに、経済界からみるとどうも新潟の経済は北が弱い。特に日本海国土軸を実現していくためには、まさに日沿道というものの建設を急いで行ってほしい。北に伸びる日本海側の道路、それからもう一つは山形へ伸びる内陸側の高規格道路というものも非常に弱いので、整備を進めてほしいと経済界では声があがっている。そうすることによって、後背地が広がり新潟の国際交流拠点である港湾も空港もさらに相乗効果で生きてくる。

また、新幹線の空港乗り入れというテーマもある。空港、港湾へのキメ細かなアクセスというのも考えていく必要があると思う。

最後にもう一つ、新潟には農業の文化があるが、そういった農業文化の発信を鳥屋野潟の周辺整備の中で行えないだろうか。鳥屋野潟整備にはいろいろなプランもあるようだが、たとえば道の駅というようなしきりの中で、鳥屋野潟周辺を農業の歴史、それから米文化、アジアの米文化を展示するようなそういうものを勉強したり楽しんだりする施設が鳥屋野潟にあると、まさに鳥屋野の発展史といっしょにアピールできるのではないだろうか。

※視座1〜4は、平成9年3月11日に行われたシンポジウム「21世紀の地方中核市の整備を考える」のパネルディスカッションにおける各パネリストの発言をまとめたものです。

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