中核市・新潟

魅力ある豊かな都市創造に向けて、整備の手法をワンランクアップ

長谷川 義明(新潟市長)

長谷川 義明(はせがわ よしあき)
写真:長谷川 義明

京都大学工学部建築学科卒。

建設省住宅局市街地建築課長、福岡県建築部長などから、新潟市助役を経て現職。

先進的な取り組みで、世界に向かって発信していくまちに

昨年4月、新潟は中核市に指定された。これは新幹線や高速道路、港湾、空港などの都市基盤整備や都市機能の充実により、地方の中枢拠点都市としての役割を果たしていると認められた結果だと考えている。今後は中枢機能をさらに充実させ、他の都市の模範となるような先進的な施策に取り組んでいかなければならない。また同時に、さまざまな面で風格のある町づくりを行っていかなければならないと考えている。

新潟は他の都市と比べてみても、国際空港や港湾などの施設を持ち、世界に開かれた都市だという点でも大変特色のあるまちだと思う。新潟は明治の始めに開港五港に指定されて以来、外国との玄関口として日本海沿岸の中で最大の都市に発展してきた。そしてここ十数年で、さらに世界に向かって開かれていく条件がずいぶんと揃ってきた。高速道路や新幹線などにより首都圏との冬季間の高速交通体系が確保できるようになったことは、新潟にとっての大きな構造変換の時代の到来だと思っている。新潟は、世界に向かって発信する可能性を秘めた都市になってきている。2002年のワールドカップの新潟招致も決定しており、新潟の魅力を世界に向かって発信する千載一遇のチャンスとして、魅力あるまちづくりをしていきたいと思っている。

魅力あるまちづくり

「魅力ある都市」とは何だろうか。私は他の都市にない新しい魅力を作り出し、それを発揮できる都市をいうと思う。新潟は魅力がないと言われることがあるが、その理由のひとつとして都市の歴史の違いも考えてみなくてはならない。明治の始め新潟は全国一の人口だったが、当時はほとんどが農民であった。考えてみれば、こんなに雪の深い中で、田を耕して一生懸命働き、そして苛斂誅求にあったのである。そうやって生まれた富により、江戸の町や京都の町が作られた。江戸や京都の人たちは雅の世界に住んでいたので、人間として魅力のあるもの豊かなものを作ろうとする力が働いていた。そういった力が働いた都市と働くだけの都市との何百年という歴史の違いはあると思う。今新潟は県のなかでも中枢都市としての機能が備わってきた。ここ100年の新潟の成長力はものすごいものがあると思う。まさにこれから作っていく町、それが新潟だ。豊かさを追求する時代を迎え、新潟には創造力を生かした豊かさへの都市資産、あるいはハートの部分を含めたソフト分野の展開が必要だと思う。

都市機能を集中させ、発展の好循環を生みだす

次の全総計画の中で新潟県は中枢拠点都市圏として位置づけられようとしており、日本海国土軸という概念のなかで重要な都市になる。それは、新潟の持っているさまざまな機能が広域的に役立つものとして成長していくことが期待されていることでもある。今、新しく作ろうとしている卸売りセンターは、これからの時代の流通の形態、あるいは産業の形態に合った機能を持つものにしていかなければならない。

国際関係においても、日本海国土軸のどこにもできない、たとえば税関など国際的な窓口として、さまざまな機能を充実させていかなければならない。新潟は韓国やロシアの総領事館など、国際的な機関も揃っている。これは日本海沿岸の他の都市にはない特徴で、世界の交流の窓口として新潟が中心だと外国の人から認めていただいていると理解している。そういったことが、だんだん新潟の発展の要素に好影響を与えるようにもっていかなければならない。

それから今度、東アジアの酸性雨のモニタリングセンターが新潟にやってくる。これも国際機関になるわけだが、そういった高次の都市機能が新潟に集中してきた時に、好循環や上昇循環に結びつくような努力をしていくことが、非常に大事なことになってくるといえるだろう。

また、これから交流の時代を迎え、よそから来た人が新潟の魅力を感じる場所を増やさなくてはならないと切実に考えている。例えば現在整備の進んでいるセントラルパークの中にできる文化会館は演劇や能も行える世界的水準のものだ。斎藤邸もまもなく完成する。水屋が四つあり、日本舞踊や伝統芸能がいつも行われているとなれば、蓮池の風情とあわせて新潟の魅力のひとつになると思う。それから、郷土資料館のあたりから信濃川べりまでにかけての土地に、昔の港町風景を復元した新しい郷土歴史博物館を作る予定にしている。信濃川と新潟の古い町並み、また一方で万代島の国際的なコンベンション、あるいは白山地区の兼六園より広い大きな都心の緑など、魅力ある新しい景観を持った新潟がもうじき誕生する。

誰もが安心して歩けるまちに

市民生活にとって安全という問題は欠かせない条件でもある。新潟は阿賀野川の大洪水や信濃川の河道変遷によって町が移転をしたり、海岸からの砂嵐によって町が埋まってしまったというような経験がある。また、30年代には地盤沈下のため都市部が0メートル地帯になった。公共事業の見直しという議論があるが、地方都市はまだまだ危険が多く、安全のための公共事業はこれからも是非必要だと思っている。

道路に関しても、新新バイパスはもう満杯である。新潟は新新バイパス級の道路が、もう何本か必要な都市の規模になってきているのだろう。港トンネルと併せて環状線の形態で新しいバイパスを作っていく必要がある。また万代島の再開発と歩調を合わせて万代島ルートに架ける橋建設のプランを進めていけたら、すばらしいものになるのではないかと思う。新潟には町の中に歩車道の区分がない道路がまだまだ多い。散策路(ウォーキングトレール)もこれからの高齢化社会には必要だし、それぞれの道路の性格をはっきりさせて、人優先の道路体系にしていかなければならないだろう。電線の地下埋設など課題は山積みだ。今生きている人のためだけでなく、これから迎える高齢化社会に備え、豊かでうるおいのある都市空間になるよう、社会資本の整備にお金をかけ、本当に安心して歩ける町にしていかなければならない。

※視座1〜4は、平成9年3月11日に行われたシンポジウム「21世紀の地方中核市の整備を考える」のパネルディスカッションにおける各パネリストの発言をまとめたものです。

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