中核市・新潟

点の整備から面の整備へ 人の行動を考慮した連続性のある整備が必要

三谷 浩(首都高速道路公団理事長、WRA-PIARC会長)

三谷 浩(みたに ひろし)
写真:三谷 浩

首都高速道路公団理事長、WRA-PIARC (世界道路協会)会長。

東京大学土木工学科卒。建設省道路局長、事務次官などを経て現職。

自立し、かつ連携していくために

新潟はさまざまな条件に恵まれている。日本でもこれだけ恵まれているところはあまりないのではないかと思う。確か新潟はかつて日本で一番人口が多かった所だし、五大港の一つでもあった。地理的条件からいっても、首都圏、中京圏、関西圏からの距離が200キロから500キロぐらいに収まっている。加えてナホトカまででさえ750キロで行ける。まさに国際交流拠点、いわゆる日本海国土軸を支える大拠点というような意味で、整備の熟度が高いという条件は間違いないだろう。それから先の課題とすれば、そういう利点を必ずしも生かしきってないのではないか、ということである。それには、やはり他の町と同じでなく、自立をし、かつ連携をするということが必要になってくるだろう。庶民の町であり、港町であり、海、自然、豊かな人情、文化、全部が揃っているわけだから、これから21世紀に向けて、どうやってこれらを燃焼させていくかというところが一つの課題だろうと思っている。例えば一つの方法として、ロンドンでは都心部にはほとんど19世紀末にできたままの道路を残しておいてあとは使い方で文化を残す、という道路についての考え方がある。ハードの上にたったソフトとして新潟の特徴を生かしながら何ができるかだと思っている。

それから交通というのは別に道路だけでなく、港や空港も含まれる。それらを全部有機的にアクセスさせることが重要で、全体としての総合交通関係の施設や施策が大切になってくるだろう。それは整備だけではなくて、使い方をどうするか、つまりどうやって今ある施設を十分活用していくかということにまだひと工夫があるのではないだろうか。

1時間の行動範囲の中に「何か」をつくる

江戸の話をすると、18世紀に人口が100万あったわけだが、だいたい25%のところに50万の町民が住んで、残りの75%のところに武士が50万住んでいた。当時、参勤交代で働いている人は、大変暇があったので、ほとんどの休みを利用して今日はどこそこのお寺さんへ行くとか、どこのお宮にお参りに行くとか、どこの公園へ行くとかというようなことでだいたい1時間、2時間という行動範囲で町の大きさが決まっていた。その後だんだん交通機関が発達してきても、やはり1時間程度の人間の行動範囲で町の大きさが決まっている。例えば全国約3000の市町村から30分や1時間で行ける範囲で高速道路の計画を作る。同じように、例えば新潟県の上越パワーセンターが大変活発で、今一つの新しい方法としてインターの近くなどに大スーパーマーケット、大商業市場をつくると大変利用者が多いということがいわれている。それもやはりどうも計画では、行動範囲を1時間圏域ということでやっているようだ。

だいたい、人間何かやろうとする時は1時間ぐらいで行けるようなところを考えるものらしい。新潟でもやはり1時間位歩き回ったときに「あっ」というようなものをつくっていかなければならないだろう。新潟の場合は例えば新潟の町を2、3時間かけてちょっと歩いてみようというときに何をみるか、というとうまく返事ができないのではないか。まあ、金沢は特別だと思うが、同じ質問をしたときに「金沢は2時間あっても兼六園、半日あっても兼六園、一日あっても兼六園」と言うのだという。新潟には兼六園はないわけだが、何かそれに相当するようなキラリと光るものが必要ではないか。

総合交通計画の中で多機能性を持たせた道路整備を

やはりこれだけインフラが恵まれているという条件があって初めて、ソフトが考えられるということになってくる。そういう意味では新潟は大変これからやりがいのある時期だと思う。特に新潟は、日本で非常に遅れている周辺部の環状道路――新新バイパスは環状というよりバイパスといった方がいいのかもしれないが――そういう道路であるとか、高速道路が非常に整備されており、もう全体の格好が見通せるというのが、これからソフトを考えていくという意味ではいいのではないかと思っている。また、都市間の高速道路に接続する都心部へのアクセスということで、万代島ルートや港口部の沈埋トンネル整備などといったパイプがしっかり築き上げられていけば、これから大きな財産になろうかと思っている。

道路というものは昔あった機能をだんだん復元しているのではないだろうか。昔は単なる移動だけではなくて情報の交換とか、お互いの交流の場だったわけである。それがいつのまにか経済活動重視で使われてきたわけだが、またぞろ本来の機能を見直そうということでいろいろと利用者の要請も変わってきた。例えば道というのは動くものではなくて止まって休むものだというのが裏にあるわけで、それが「たまり機能」ということで、道の駅の評判が大変よくなった。そういうものができるポテンシャルが新潟にあるというのは大変期待もしているし、羨ましいし、是非がんばって欲しいと思っている。

最近、ウォーキングトレールといって1時間ぐらい散策をする道を作るということが行われている。ロンドンで出された交通政策によると、やはりできるだけ人間を歩かせようということで、歩行者だけが通る道路の計画を作ってすごくしっかりやっている。自転車道もしかりである。テームズ川を使っての交通計画や物流の自動車交通計画など、まさに総合交通計画を立てている。我々としても、道路が多様な機能をもっている、それは単に移動するだけではなく、情報交換の場でもあり、文化の交流の場であった、あるいは、散策の場であったり、休息をとる空間でもあることも意識してきたが、改めて、そういう視点に立ち戻ると、果たして、これまでちゃんと整備してきたかという反省もある。イギリスの事例ではないが、多様な交通機関も含めて総合交通計画をどんどん議論してみるべきだろう。

私が新潟市に住んでいた5、6年前でも、信濃川に沿って歩こうとすると確かに部分的には非常にいい親水護岸があるのだが、やはりずっとぶらぶら歩いてというわけにはいかない。連続性がないために結局またタクシーに乗ってどこかに行くということになってしまうので、少し寂しい感じがしていた。そういった連続性を持った整備ということをこれから考えていったもいいのではないかと思う。

※視座1〜4は、平成9年3月11日に行われたシンポジウム「21世紀の地方中核市の整備を考える」のパネルディスカッションにおける各パネリストの発言をまとめたものです。

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