地方都市・中山間地では都市郊外への人口流出やモータリゼーションの発達により、公共交通の利用者は長期的な減少傾向にある。時に、路線バスにおいては減便・廃止が相次ぐ厳しい状況が続いている。
三大都市圏以外の路線バス輸送人員は、約35年間でおよそ1/3以下にまで減少している。利用者の減少によりバス事業者の採算性は悪化し、三大都市圏以外の乗合バス事業者では83%が赤字と厳しい経営状況となっている。
バス(一般乗合)輸送人員の推移
出典:国土交通省総合政策局「陸運統計要覧」
一般乗合バス事業者の経営状況(平成18年度)
黒字 | 赤字 | 計 | |
---|---|---|---|
三大都市圏 | 44 | 40 | 84 |
民営 | 44 | 29 | 73 |
公営 | 0 | 11 | 11 |
三大都市圏以外 | 30 | 140 | 170 |
民営 | 30 | 124 | 154 |
公営 | 0 | 16 | 16 |
全国 | 74 | 180 | 254 |
※保有車両30台以上の事業者
出典:国土交通省自動車交通局旅客課資料
平成14年、道路運送法の改定が行われ、バス事業に対する需給調整の撤廃・規制緩和がされることとなった。新規参入は免許制から許可制へ、路線の休廃止は許可制から事前届け出制へと改定されたが、地方都市および中山間地域においては、新規バス事業者の参入ではなくバス事業者の不採算路線からの撤退を促す結果となり、近年も漸増傾向である。
路線バス廃止のあった市区町村数と路線数
出典:国土交通省自動車交通局旅客課「バスの運行形態等に関する調査報告書」
近年、このようなバス事業者の不採算路線の撤退を背景として、地方自治体がコミュニティバスを導入するケースが増えている。
国土交通省自動車交通局旅客課「コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会報告書(2006)」によれば、全国の市区町村2,418(平成17年4月1日時点)の約4割にあたる914市区町村でコミュニティバスが運行されている。
コミュニティバスの導入理由は、路線バスの廃止代替や交通空白地の解消としてだけでなく、中心市街地の活性化や過度に自動車に依存しない都市構造を目指す取り組みの一環として導入するケース等も見られるが、多くは前者である。
また、コミュニティバスの他にも、タクシー車両を用いたり、デマンド型(需要応答型)交通といった従来にない形態が誕生している。
コミュニティバスの導入目的
出典:国土交通省自動車交通局旅客課
小規模需要に摘用される交通システム
首都大学東京都市環境学部RA 吉田氏提供