国土構造の変化と地域づくり

地元の元気と格差是正は実現するか 「ふるさと納税制度」を読む

格差是正を目指して
「ふるさと納税」制度の登場

こうした動向を背景として「ふるさと納税」と呼ばれる構想が浮上し、自治体関係者をはじめ大きな注目を集めている。

これまでにも自治体への10万円以上の寄付金は所得控除の対象になるなどの促進策や、自治体自らが条例を定めて寄付金を募ろうとする「寄付金条例」等の動きはあったが、使いにくさや認知不足等のさまざまな理由から大きな流れとなるまでには至っていなかった。

平成19(2007)年5月に当時の菅義偉総務相が、新たな税制度として「ふるさと納税」構想を発表。それを受けて有識者による「ふるさと納税研究会」(座長:島田晴雄千葉商科大学学長)が発足し、全国の知事を巻き込んだ議論を行い10月に報告書を公表した。

報告書は「ふるさと納税」の意義として、以下のような点をあげている。

「ふるさと納税」の意義
  1. 納税者自身が自らの意思で納税対象を選択できるという、世界的・歴史的にまったく新しい仕組みとして大きな意義をもつ
  2. 健全な国土と国民生活を支える上で大きな役割を果たしている地方の役割への理解を促し、活性化を応援する機運を生む
  3. 選択的な納税を通じて「自治意識」の涵養と向上を図るとともに、自治体間に良質の競争を生み出し、地方分権改革を推進する

6月からスタートした研究会は、1ヶ月に2回のペースで精力的に検討を行っている。そこでのテーマや論点は多様であり、例えば「ふるさと」をどう定義するかという議論もあった。

日本人の居住行動を見ると1つの都道府県にしか住んだことがない人は37.5%。半数以上が2ヶ所以上の都道府県での居住経験があり、平均は2.13県となっている(国立社会保障・人口問題研究所「第5回人口移動調査」(平成13年)より)。出生地、育った地域(養育地)、現住地、憧れをもちいずれ住んでみたい地域など、「ふるさと」は人によって様々だし一箇所だけとは限らない。

このほかにも日本の現在の税制や税体系との調和や、実際の納税および控除・還付の事務など、専門的な論議も行われ、以下のような点を柱とする報告書を取りまとめた。

  1. 自治体への寄付金を個人住民税から控除する「寄付金税制」を拡充することで制度を構築する
  2. 納税者は出生地や育った地域に関係なく自由に寄付する先( = ふるさと)を選択・決定できる制度とする

この報告書の内容をもとに、「ふるさと納税」の導入を盛り込んだ地方税法改正案が作成され、平成20年2月に閣議決定。国会での審議が始まっている。

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