日本人の人口移動を見ると、中部・北陸地方で生まれた人は他地域への移動が少なかったりUターンして帰郷する傾向が強いようである。しかしそれでも東京圏や名古屋圏、大阪圏に移り住んでいる人は多い。(図6)
図6 現住地と出生地の関係(平成13年)
<出生地と現住地が同じ人の割合>
<中部・北陸出生者の現住地>
現在地 | % |
---|---|
北海道 | 1.0 |
東北 | 0.5 |
北関東 | 1.5 |
東京圏 | 6.2 |
中部・北陸 | 90.4 |
名古屋圏 | 3.7 |
大阪圏 | 2.1 |
近畿 | 1.5 |
中国 | 0.6 |
四国 | 0.1 |
九州・沖縄 | 0.5 |
※中部・北陸:新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、静岡
(国立社会保障・人口問題研究所「第5回人口移動調査」)
「ふるさと納税」制度が国会で成立し、新たな社会システムと位置づけられた際には、こうした3大都市圏に移り住んでいる北陸出身者が積極的に活用することを期待したい。それは将来の帰郷や二地域居住のためにも有効であり、そうした応援が美しくまた活力ある北陸の地域づくりを実現していくための大きな力となる。
北陸出身者は郷土への思いやふるさと意識が強いとされている。福井県が行った東京と名古屋の県人会への調査結果では、「ふるさと納税」のような制度を「利用したい」と答えた人が8割近くにも達している。(図7)
図7 「ふるさと納税制度」に対する意識(福井県人会)
<「ふるさと納税制度」の必要性>
<「制度」の利用意向>
(福井県調査:東京県人会(59)、名古屋県人会(53)計112人への調査 平成19年)
一方でNPO法人政策過程研究機構が平成19年に20〜30代を対象に行った調査では、寄付したい地域として「北海道」「沖縄」「大阪」「京都」「東京」が上位に位置している。地域イメージや若者が親近感や憧れを持っている都道府県が上位を占めたわけで、こうした意識で「ふるさと納税」が行われると、地域間格差はさらに広がりかねない。
その意味では各地方圏はこれまで以上に自らを発信・アピールしていくことが必要なのかもしれない。あなたの「ふるさと」として地域への理解と良好なイメージ形成を図り、納税者に選ばれるために新たな競争に勝ち抜いていかなければならない。
研究会が提言しているように、「ふるさと納税」で寄せられた寄付金をどのように使うのか、それによってどのような地域を目指すのかを明確にすることも「選ばれる」ためには重要な取り組みとなる。また毎年その成果を決算報告として全国に発信することも、納税者に対する説明責任として欠かせない。
地域外に住む人たちとのコミュニケーションをしっかりと行い、「ふるさと」だと思ってもらうために、それぞれの地域には新たな努力や取り組みが必要になる。
ふるさとへの想いを形に変えて応援する仕組みとして、また人材の供給や安全・安心や環境保全など地方圏が担っている役割への再認識、そして格差を是正しつつ地方圏の活力ある地域づくりのために。「ふるさと納税」制度のこれからの動向に注目したい。