北陸の地震被災と日本の課題

中越沖地震はどのように報じられたか-新聞報道分析にみる被災地の課題

被害から救援・復旧へ そして被災住民の状況へ

最初の1週間の報道内容について新潟日報を含めて詳細に見ていくと、概ね以下のような流れになっている。(図2)

  1. 「地震の事実・被害」
  2. 「住民の救援や避難活動」
  3. 「ライフラインや産業基盤の状況・復旧活動」
  4. 「避難所の生活と復旧の見通し」(被災1週間のまとめとして)

3年前の中越地震の際には、新幹線の脱線や様々な救出劇、全村避難といった、全国が注目するような事象があり、それが大きく紙面を飾ってはいるが、先に紹介した基本的な報道の流れや構造は今回の中越沖地震のそれと変わらない。能登半島地震でも同様である。

地震災害における報道の流れが共通しているのは、災害発生以降時間とともに新聞社や記者に集まってくる被災地情報の変化を反映したものといえる。

まず気象庁や県からの地震発生の第1報が入る。この時点では被災地の状況はまだよく分からない。次に行政が実施している救援活動の情報が入り、そこから被災した住民の姿が見え始める。住民の避難と安全が確認できたところで、ライフラインやインフラについてまとまった情報を確認。そして被災地が落ち着きを取り戻し始めた頃に、避難所の様子や被災者の姿、今後の見通しへと移行する。

被災地の外側から徐々に内側の情報に向かい全容が分かってくるという動きは、マスコミだけでなく対策本部などでも同じであり、災害時の情報の伝わり方の基本パターンと考えられる。

図2 発生後1週間の新聞報道(主な報道テーマ)

日付 記事のテーマ 主な記事内容 備考
7月17日
(2日目)
地震に関する直接的被害状況
  • 地震発生の事実(規模、震源地、被災地 等)
  • 被災地の被害状況(直接的被害)
  • 地震発生のメカニズム分析
  • 政府や地元行政等の初動体制
  • 原発停止と関連報道
 
救援活動や避難活動に関する報道
  • 救援活動(ボランティア、救援物資 等)
  • 避難活動(避難状況、避難所の様子 等)
  • 3日目以降も継続的に報道
18日
(3日目)
復旧に関する報道
  • ライフラインの復旧状況及び復旧見込み
  • 3日目以降も継続的に報道
産業への影響に関する報道
  • 自動車産業への影響(リケン問題)
  • 地元産業への影響(酒蔵の倒壊等)
 
19日
(4日目)
原発の被災と事故に関する報道
  • 火災の原因と火災対策の不備
  • 各種調査の不足(耐震性や建設時の断層の過小評価 等)
 
20日
(5日目)
原発における新たなトラブルの発覚
  • 地震計の記録紛失
  • 自社内の「消防隊」召集不能 等
  • 以降記事が増加傾向
21〜23日
(6〜8日目)
復旧に関する報道
  • ライフラインの復旧状況
  • 復旧に伴う課題(ゴミ処理施設)
  • 仮設住宅
  • 産業分野の復旧(リケン、地元企業等の生産再開)
  • 震災発生後1週間という観点からのまとめ型の記事
被災者の状況や避難所生活に関する報道
  • 被災者・市職員の疲労(エコノミークラス症候群)
  • 震災から1週間の被災地(生活の回復、授業の再開、高校野球予選再開 等)
 
風評被害への対応
  • 泉田知事や地元による「海」の安全性のアピール(観光、海水浴場、水産物 等)
 

(編集部作成)

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