北陸の地震被災と日本の課題

中越沖地震はどのように報じられたか-新聞報道分析にみる被災地の課題

2ヶ月半で忘れられる地震災害 全国にいかに情報発信していくかが課題

3年前の中越地震では、地震発生直後の1週間に全国紙が報じた記事の件数は3,059件で、中越沖地震の1.5倍、能登半島地震の4.4倍と多い。阪神・淡路大震災以来の大きな地震災害であったとともに、先に述べたように上越新幹線の脱線やヘリコプターでの避難や劇的な救出活動など、印象に残る事件や活動が多かったことがその理由としてあげられる。

しかしその中越地震でも全国紙の報道は時間とともに減少していく。地震発生後2ヶ月が経過した12月末には1,055件と3分の1程度に減少、その後も報道件数は減少し続けている。能登半島地震でも当初の693件が2ヵ月後には182件へと4分の1に減少している。(図4、図5)

図4 中越地震に関する新聞報道の推移(全国紙、記事件数)

グラフ
10月 11月 12月 2005年1月 2月 3月
24〜31日 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬
朝日 593 542 410 309 299 251 236 129 233 190 110 112 57 84 63 88
毎日 882 755 640 446 430 325 358 169 330 245 169 147 99 116 102 114
読売 910 681 536 383 341 248 292 144 246 154 138 91 81 96 73 116
産経 261 159 117 76 49 42 55 21 46 31 23 18 12 15 10 20
日本経済 413 273 192 123 109 91 114 48 94 65 66 28 22 46 28 37
合計 3,059 2,410 1,895 1,337 1,228 957 1,055 511 949 685 506 396 271 357 276 375

(編集部作成)

図5 能登半島地震に関する新聞報道の推移

グラフ
3月 4月 5月 6月 7月 8月
25〜31日 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬
朝日 158 142 85 60 38 45 31 32 19 26 22 42 19 17 15 30
毎日 193 235 179 114 76 69 42 29 41 32 18 34 29 14 4 20
読売 161 157 120 83 46 49 37 33 30 35 25 43 37 21 19 35
産経 60 41 30 18 7 3 4 3 0 5 2 24 9 6 2 4
日本経済 121 63 44 33 11 16 18 9 7 7 17 16 17 10 5 9
合計 693 638 458 308 178 182 132 106 97 105 84 159 111 68 45 98

(編集部作成)

「人のうわさも75日」といわれるが、まさに地震に関する報道はそのことわざの通り75日(2ヶ月半)もたてば報じられることは少なくなる。それはつまり被災地周辺はともかく、社会的・全国的には忘れさられる、関心が失われるということなのだ。

地震災害からの復興は時間がかかることが多い。それはまず道路や橋などのインフラや公共空間が復旧・整備され、その後に住民や地域の本格的な復興活動が始まるからだ。中越地震の被災地では3年を経た今年になって、ようやくそれぞれの集落やまちごとの本格的な復興活動への取り組みが始まったばかりだ。

地震からの復興は時間をおいて始まる。その復興には全国からの応援が再び必要となる。その時再び被災地に関心や応援意識を持ってもらうために—。被災地から全国に向けての情報発信を中長期的な視点で戦略的かつ計画的に展開していく必要がある。

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