北陸の地震被災と日本の課題

中越沖地震はどのように報じられたか-新聞報道分析にみる被災地の課題

原発、風評被害、中越の知恵などが中越沖地震における記事の特色

中越沖地震に関する報道記事で他には見られないもの、特徴的な記事は、やはり東京電力柏崎刈羽原子力発電所の被災と関連する事故やトラブルの記事であろう。原子力発電所を直撃した地震災害として世界中から注目されたこともあり、当初から各紙が注目して報道を行った。記事件数では最初の1週間では513件にのぼっている。

記事そのものの件数は時間の経過とともに減少しているが、地震関連報道における比率は、当初の25%から徐々に高まり9月末時点では39%を占めるにいたっている。(図3)

図3 原発記事の推移

グラフ
7月 8月 9月
17〜23日 24〜31日 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬
原発記事 513 421 254 165 241 122 102 112
(25.1) (29.2) (26.1) (29.2) (37.2) (27.1) (31.1) (38.6)
原発以外の記事 1,527 1,023 720 401 407 328 226 178
(74.9) (70.8) (73.9) (70.8) (62.8) (72.9) (68.9) (61.4)
全体 2,040 1,444 974 566 648 450 328 290
(100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0)

地震報道以外では風評被害に対する新潟県や地元の対応の動きが、地震発生後はやくも1週間後にみられることに注目させられる。

地震によって原発から微量の放射能を含む水が漏れたことなどを背景に、柏崎や寺泊周辺の水産物への影響を懸念する風評が一部に広がった。このため、泉田新潟県知事が出雲崎で刺身を試食して安全性を訴えたり、寺泊でサザエのつぼ焼きを観光客に無料でふるまうなど、新潟の海の安全性をアピールする行動を行い、マスコミを通じて全国に発信。風評被害を抑える情報活動に取り組んでいる。

3年前の中越地震では、新潟県や北陸地域は被災地から離れた地域の観光までが風評被害によって大きなダメージを受けた。それを教訓として早期の対応を試みたものだが、記事となって報道されたことは一つの成果といってよいだろう。

中越沖地震の報道でもう一つ注目されるのは、中越地震との比較や中越地震の教訓を活かせといった記事が多いことである。実際の避難や救援活動では、防災協定やボランティアネットワークなど中越地震を契機に誕生した仕組みが機能したり、避難所ではコミュニティごとに集まったりエコノミークラス症候群へのケアなど、中越で学んだ知恵やノウハウが発揮された。新聞報道でもそうした動きを評価したり、教訓の活用を呼びかける記事が多く見られる。例えば社説や解説記事に見られる次のような記事である。

「中越にまた大地震 3年前の教訓を生かそう」(新潟日報)

「中越沖地震 教訓は生きているのか」(東京新聞)

「『3年前の悲劇』繰り返すな」 (新潟日報)

「中越沖地震1週間 教訓は生きたか」(東京新聞)

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