国土学からみた北陸の地域づくり(上)

北陸の脆弱性と厳しい自然条件を検証する

先人たちの取り組みに学びつつ世界と競争できる北陸づくりを

このように、北陸地域は人々が居住・生活していく上で、さまざまな困難や制約を受けざるを得ない地域である。しかしながら先人は社会資本整備を通じて、厳しい自然と対峙し、闘いに打ち勝ってきた、その上に今日の私たちの生活が成り立っている。

大河津分水や立山砂防、白山砂防など、先人たちが取り組んできた「安全・安心」を守る闘いによって、北陸地方の自然災害は減少した。それだけではなく、道路整備や産業立地を促し、北陸の発展を実現してきた。

北陸の発展だけではなく、被災経験が全国の建設行政に貢献した例も多い。例えば新潟地震における液状化現象や耐震強度の問題をふまえて、液状化対策による道路陥没や段差発生を抑える研究がなされたほか、橋梁の耐震構造が普及した。

河川では堤防の改修による強度向上や水量調節による氾らん防止、港湾では津波対策の埠頭地盤かさ上げや耐震岸壁の建造が推進されたほか、空港は滑走路の液状化対策、鉄道は道路同様に沿線への地震計設置と橋梁等の耐震化が進行した。建築物では、耐震構造の強化とともに難燃材の使用等仕上げにおいて災害に強い材料や工法が用いられるようになった。北陸は被災経験とそこからの復興を通じて、自らの地域の発展だけでなく、国土づくりにも貢献したのである。

北陸は日本の中でも脆弱で厳しい自然条件にある。したがって社会資本整備などの国土への働きかけを行うには、他地域よりもコストがかかったり、より高度な技術・ノウハウが求められることも多い。これは地域間競争や国際競争の上ではハンデとなることは否めない事実だ。

しかし北陸には、先人たちが残してくれた強靱な社会資本(=次代への基盤)がある。これらを活用しつつ北陸の人々が「国内そして世界の民と競争しつつ生きる」ために、「時間軸」と「空間軸」を見据えつつ、国土に働きかけていく。「国土学」の視点と次代に向けたそうした取り組みによって、個性と競争力のある北陸の地域づくりを進めていくことが求められる。

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