国土構造の変化と地域づくり

情報革命で大きく転換する日本社会。地方圏は自らの選択と戦略によって新たな時代の地域づくりを推進すべきだ。

戸所 隆 (高崎経済大学地域政策学部教授、文学博士)

世界都市の建設と地方圏の自立を図り水平ネットワーク型の国土づくりをめざす

情報革命という時代の大転換をふまえて、これからの日本がめざすべき国土構造とは「世界都市の建設と地方圏の自立による水平ネットワーク型国土構造」だと考えている。

国内でみると東京一極集中が進行しているが、世界的にみれば東京の地位は相対的に低下している。かつてはニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界経済の3極の一つと位置づけられていたものが、世界的な影響力という点でニューヨークやロンドンに水をあけられ、背後からは上海の足音が聞こえてきている。

グローバル社会においては、世界の人たちとの交流が不可欠であり、政治・経済、文化・生活といったあらゆる分野で日本を発信し、同時に世界の人や情報をキャッチする都市( = 世界都市)が不可欠だ。そこで、東京・横浜をはじめとして京都・大阪・神戸、名古屋などの大都市は積極的に交流機能を強化して世界都市にしていけばよい。ただしその過程において、首都機能や研究機能などを地方圏に分散・移転していくことが重要だ。

地方圏は、大都市圏からの機能分散を受けながら、それぞれの特性や戦略を展開し、それぞれが自立していく。大都市とは異なるしくみやシステムを認め、おおらかに地域づくりを進めていくべきだろう。その上で、大都市と地方圏が上下関係ではなく対等な形で結びつき、相互に補充し合う水平ネットワーク型の国土構造を構築していく。これが早急に日本に実現すべき国土像であり目標だと考える。

世界都市と地方圏が水平ネットワークで結ばれた新しい日本の国土構造をめざす中で、地方圏も安定的で活力を生み出す都市構造・地域構造を模索し実現していくことが求められる。そのキーワードは「大都市化と分都市化」だ。

「平成の大合併」によって市町村数は激減したが、代わりに広大な市域と小さな中心街や市街地を多数持つ自治体が増加した。こうした地域で従来のように都心への一極集中を進めたのでは、近郊都市や都心から遠い周辺地域への投資は困難になり、人口流出や衰退が一気に進行する。それを避けるためにも、点在する小さな都市的集積を生かしてコンパクトな街(分都市)を再整備し、分都市間で機能を分担しながら水平ネットワークを形成することで住民の生活ニーズに応えていく。

一方で都心は基本的な都市機能の拡充を図りつつ、周辺の分都市とネットワークすることで大都市に負けない集積や機能、中心性を確保していく。いわば分都市と一体となることで大都市化を進めるわけである。都市にはやはり中心が必要であり、それが魅力的であれば域外の人たちを惹きつけ、新たな交流や活力を生み出す。重要なのは何でも都心に集中させるのではなく、コンパクトで利用しやすい分都市を展開し、階層的(上下関係)ではない水平ネットワークで中心の分都市と周辺の多くの分都市を連携し、一体化することだ。

この大都市化と分都市化という発想は、きたるべき道州制にも対応する21世紀型の都市づくり、地域づくりの考え方にもなる。

図3 都市化と分都市化による新しい都市構造へ

戸所作成資料

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