これからの地方圏はどのような目標と戦略を持ち、どのような地域づくりをめざすのか。その方向性を整理してみる。
地方圏では、知識や情報を集め新しい知恵を生み出す有効な方策として交流を拡大することが基本戦略となる。つまり、求心力に優れた活力ある地域社会を形成していくことが、地方圏が目指すべき方向性の第一番目にあげられる。
地域外市場産業とは主に地域外の人たちを顧客とする産業であり、域外のお金を地域内に取り込むといういわば「外貨稼ぎ」の産業のこと。これが活発であれば雇用の拡大や地域経済の成長につながる。地域内市場産業とは主に地域住民を顧客とする産業で、住民のニーズに応え快適性や利便性を創り出したり、地域の個性や魅力にもつながる産業である。どちらかを重視するのではなく、両者のバランスがとれた産業構造を目指す必要がある。
地方分権改革はかなり以前から議論されてきた。しかし、これまでの動きをみると依然として東京と結びつくことで活力を高めようという考え方や発想が残っているように感じられる。東京をゴールと考える「双六(すごろく)」のような価値観から脱却して、全国どこでも成長のチャンスがあるというしくみや制度を確立していくべきだろう。
人や情報をひきつけたり、交流を拡げる上で、地域ブランドをつくり活用することが有効となる。例えば、京都や大阪、沖縄などは東京とは異なる、あるいは全国のどことも異なる個性的な地域空間を形成しており、それぞれが「京都ブランド」「大阪ブランド」ともいうべきまち空間や産物を生み出している。それは地域内市場産業でありながら、地域外の人たちをひきつける産業としても位置づけられる。
地域ブランドに求められるものは「差異化」「約束・確実性」「顧客満足」「一流性」「発展性」である。しかし難しく考える必要はない。実はそれぞれの地域の暮らしぶりや日常生活、まち空間こそが地域ブランドの大きな資源なのだ。住民にとっての日常空間を訪れる人たちの非日常空間に変えていくしかけこそが、地域ブランドの育成の鍵となる。
路線バスが廃止されるなど地方の公共交通機関は縮小を続けており、それに伴い都心から離れた中山間地は人口流出や集落崩壊の危機に直面している。利便性の高いコンパクトなまちが点在し、それぞれが連携や補完関係にあるような地域構造では、それらを相互に結び交流を促す交通網の構築が欠かせない。特に都市部と中山間地を縦横に結ぶ循環型の地域内交通を構築し、地域内結節を高めるとともに、新たな結びつきによる可能性を模索していくべきだ。
(シャトル型―拠点都市を鉄道が直線的に結び、駅を拠点にバス路線網が形成)
(循環型―拠点都市間を鉄道が環状に結び、環の内と外にバス路線網を形成)
北陸をはじめ地方圏は東京や大都市に人材を供給してきた。今新しい国土構造、地域づくりを進めようとするとき、地方に人材が少ないという現実に直面することも事実だ。まちづくりは10年、20年という長い視点から考えるものであり、将来のために布石を打つという取り組みも必要となる。次代を先導するリーダーの育成も今取り組むべきことだ。
夢が抱けず未来に希望を持てない地域は衰退する。自分たちが暮らす地域の過去・現在・未来を語り合いながら、時代の変化に対応した地域づくりを住民参加で進めていく。これからの地方圏に求められるのはそうした地域づくりへの取り組みだ。