知識情報社会における国のかたちを考えると、人や情報が東京や大都市に集中するのではなく、日本全体に適度に分散し、各地で生まれる多様な交流を通じて新たな知恵や情報が生まれていく。そうした知識や情報を再生産するダイナミズムが日本全体に拡がり、水平ネットワークで共有されるというものになる。そのためには、日本各地に「大都市と分都市」構造を展開していく必要がある。
その構造を推進していくために、また知識情報社会における強靱な日本を実現していくために、国際競争力を高めるための基盤整備に集中的に取り組むことが、国の大きな役割となる。その意味でこれまで以上に教育力の向上と交通体系の整備が重要になる。
知識情報社会における富の源泉は「知力・知恵・情報」であり、それは世界との競争における力となるものだ。つまり「教育」あるいは「人材育成」の強化こそが次代の日本に不可欠な国家戦略となる。
基礎教育は自治体に委ねればよい。むしろ国は高等教育機関や人材育成、また研究環境の整備に集中的な投資を行い、世界をリードしうる知識や情報の開発と蓄積、そして人材育成を進めることが大きな役割となる。
情報通信基盤の整備も重要だが、水平ネットワークの確立や交流の拡大のためには交通基盤の役割が重要になる。東京や大都市圏から放射状に拡がる鉄道網や道路網だけではなく、大都市化した地方都市圏における分都市間がスムーズに行き来できるような環状の交通ネットワーク網の整備が欠かせない。鉄道でいえば東京集中型の新幹線だけでなく、地域に張り巡らされた在来線ネットワークの強化・拡充が重要であり、その支援こそが国の役割となっていく。
また国際競争力の観点から、空港や港湾の戦略的な整備や活用を先導していくのも国の大きな役割だ。狭い国土にいくつもの国際空港が建設され、お互いに競い合っている。機能分担を前提に強調して高度な機能と大きなキャパシティを持つ国際ハブ空港を実現すればよいのだが、現状は韓国の仁川空港にその座を譲っている。
高速道路は整備が進んでいるが、料金が高いので物流ドライバーは利用しないことが多いという。高速道路を利用しなければ時間がかかり、利用すれば料金が上乗せされる。日本の物流コストの問題はよく指摘されるところだが、物流に限らず交流を活性化する意味からも、環境問題に配慮した上で、アメリカのように高速料金の無料化を政策として考えるべきではないだろうか。