国土学からみた北陸の地域づくり(下)

国際競争力を維持・向上するためには。次代をみすえた社会資本の整備と地域間連携の取り組みが欠かせない

大石 久和 (財団法人国土技術研究センター理事長)

整備水準が低い日本のインフラ
世界各国との差は広がっている

では日本のインフラの整備水準は諸外国に比べてどのようなものだろうか。

道路を例にとると、制限速度が時速60km以上の道路は日本には約21,200km、時速100km以上の道路は約2,800km整備されている。しかし制限速度60km以上の道路を人口当たりで比較するとアメリカは日本の10倍、制限速度100km以上の道路では実に33.5倍も整備されている。ヨーロッパ各国でも時速60kmの道路は日本の3〜4倍、時速100km以上では7〜8倍の整備水準である。

図3 各国人口当たりの道路整備比較

制限速度60km/h以上

制限速度100km/h以上

(大石作成資料)

実際の道路延長距離を日仏独で比較してみても、日本はドイツやフランスに遅れをとっている。つまりドイツやフランスは日本よりも整備された高速道路ネットワークを利用することができるわけで、競争という点からみると日本は大きな遅れをとっている。しかもアメリカも欧州諸国も道路整備を日本以上に進め続けている。日本と欧米諸国の道路インフラの差はさらに拡大しているのだ。

図4 日仏独道路ネットワーク比較

  <制限速度60km/h以上> <制限速度100km/h以上>
道路延長 対象 道路延長 対象
日本 約21,200km 自動車専用道路、一般国道 約2,800km 自動車専用道路
フランス 約36,800km 高速道路、国道 約10,200km 高速道路
ドイツ 約53,100km アウトバーン、連邦道路 約12,000km アウトバーン

(大石作成資料)

さらに注目すべきは中国や韓国といった東アジアの国々の動向である。かつての日本が欧米諸国に追いつき追い越せと頑張ってきたように、東アジアの国々がキャッチアップすべきは日本であり、すでに空港や港湾では日本を上回るインフラが整備されている。

空港では成田が4,000mと2,180mの2本の滑走路なのに対して、仁川(韓国)や上海、香港、マレーシア、シンガポールの各空港は4,000m級の滑走路を2本持ち、さらに拡張を図っている。港湾でも、1983年には香港に次いでアジア2位のコンテナ取り扱い量を誇っていた東京港は、2003年にはアジアの港に追い越され、釜山港の半分というのが現状である。

図5 東アジアの主要空港の滑走路(2007年4月現在)

国・空港名 供用中の滑走路(m) 整備・計画中の滑走路(m)
日本 成田 4,000 , 2,180 3,200
関西 3,500 4,000
韓国 仁川 3,750×2 4,200×2
中国 北京 3,800 , 3,200 3,800
上海 4,000×2 4,000×2
香港 3,800×2
マレーシア 4,000×2 4,000×3
シンガポール 4,000×2 -

(国土交通省資料)

図6 東アジアの主要港湾のコンテナ取扱量の推移

(単位:千TEU/年)

港名 東京 釜山 上海 香港 高雄(台湾) シンガポール
1983年 1,623 884 83 1,837 1,479 1,274
1993年 3,705 3,071 900 9,204 4,636 9,046
2003年 5,818 10,408 11,280 20,449 8,840 18,100
83→03年伸び率 3.6倍 11.8倍 135.9倍 11.1倍 6.0倍 14.2倍

(国土交通省資料)

もともと格差のあった欧米諸国からはさらに差を拡げられ、大きく水をあけていた東アジアの国々からはキャッチアップされている。日本の主要なインフラの整備水準が相対的に低下していることは否めない事実であり、それが国際競争力の低下の一因となっているといえるだろう。

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