ネットワークが整備され大都市と結ばれると、人もモノも文化もストローのように吸い取られるだけではないかという意見がある。例えば四国の人口減少は本四3橋が最大の原因だというものだ。私は逆に本四3橋がなければ人口はもっと減っていたのではないか、橋があるお陰で文化や経済活動が維持され、四国に踏み止まれる人も多いのではないかと考えている。
よりよいネットワークができれば選択肢はひろがる。例えば中山間地に両親が住んでいたとして、いつでも行き来できるならば、無理に都市部に住み替えてもらう必要はない。逆に住み替えたとしてもいつでもふるさとを訪ねることができる。
産業でいえばこれからは「適地適産」が進む。農業はもちろんものづくり分野でもその地域が培ってきた技術や個性、強みというものがある。その強みが何なのかというところに目を向けていくこと、ネットワークを活用してそれを磨き発信していくことでその地域の産業競争力は高まっていく。誰と何で競争するのかという意識を持って自分たちの強みを発見していくことが重要だ。
ドラッカーの言葉に「自分の企業が何なのか、コア・コンピタンスというものに目覚めないと企業の発展はない」というものがある。コア・コンピタンスとは「核となる能力・資産」といった意味で、何が一番強みなのかを明らかにすることが重要ということだ。同じように私たちの日本は、北陸は、新潟県は、富山県は、石川県は、福井県は一体何が強みなのかということをもっと意識しなければならない。
それぞれの地域には他の地域にないものが必ずある。それを他の地域に勝てるだけのブランドに磨いていけるのか、あるいは競争に負けていくブランドにしてしまうのか、それはそれぞれの地域における強みの発見とそれの生かし方にかかっている。試行錯誤は当然伴うことになるが、強みの発見とその錬磨やレベルアップ、競争力の付与といったようなことを考え進めていく。その時に道路や情報のネットワークが整備されていると大きな力を発揮するだろう。
残念ながら日本はもはや強い国ではなくなってしまった。日本が再び強い日本、競争力ある日本を作り上げていくためには、発想を大きく転換する必要がある。これまでのように国の指針や整備事業を待つのではなく、北陸地方をはじめ、全国のそれぞれの地域が強みやネットワークを活かして競争力を高め、世界の国々に打ち勝っていかなければならない。
それぞれの地方圏がどのように連携し、宝物を見つけ、日本という国に貢献していくのか。北陸の強みが日本の強みになる時代を迎えているのである。