新しい時代には新しいインフラが必要になる。60年前の日本には高速道路は考えもされなかったし、下水道というインフラも必要ではなかった。現在のインターネット社会を10年、20年前に予測していた人はそれほど多くはないだろう。
しかし自動車の性能が向上し道路が整備されると、人や物をより早く動かしたいという社会的ニーズが生まれる。そこで高速道路という新しい装置やそれを運用する制度が生まれ生活の中に定着していく。一度獲得した快適性や生活水準を下げることは難しい。より便利でより快適な高速道路が求められ、ETCなどのITS技術が新たなインフラとして整備が進行する。情報通信分野も同様に、ビットからバイトへ、そしてギガからテラへ。インターネットというインフラは、より高度なインフラへと成長を続けている。
このようにインフラは社会変化や社会ニーズに応えて新しいものが登場したり、機能や役割を高めていく。こうした社会変化をにらんで、的確に整備戦略を展開していくことが必要になる。その点で日本はやや他国に遅れをとっているといえるかもしれない。
新しい時代という点では日本が直面している人口減少社会にも着目しなければならない。人口が増えない、大きな経済成長が期待できないという、かつて体験したことのない時代を迎え、社会資本整備や国土づくりにも新しい視点や発想が求められている。それが「連携」という考え方である。
人口も経済も右肩上がりの時代に全国の各県が目指した「フルセット」型のインフラ整備はもはや困難であり、周辺地域と役割や機能、インフラ等を分担しながら、相互の依存関係の中で社会的ニーズに対応していくという方向である。
多様化・高度化する社会的ニーズや住民サービスに、一つの県がすべて対応しようとすれば、整備すべきインフラも運営する職員も膨大なものになる。フルセットにこだわればサービス水準の低下も起こりかねない。そこで周辺県との連携である。病院や図書館のような生活に密着したサービス施設から、大学等の教育機関、空港や港湾等の交通・物流拠点、また新しい産業を開発・支援するインキュベーター拠点など、様々なインフラを複数県で共有すれば、それぞれの役割に応じた集中整備による高度化も可能になる。
さらに相互交流が拡大することで、豊富な知恵や情報が出会い新しい技術や製品、情報を生み出す可能性も大きくなる。もちろん東京や大阪、名古屋などの大都市との連携も視野に入れる必要がある。
連携とはインフラの使い方や整備手法を変えるということである。それは人口減少社会に入った日本に欠かせない視点・発想であり、同時にこれからの地方圏の競争力を向上・維持するために必要な戦略といえるだろう。