地域コミュニティと公共交通

地方公共交通に明日はあるか 地域における鉄道の存在意義を考える

経済性や環境面での地方鉄道の必要性・有用性は低い

このような趨勢を考えると、地方では他の交通機関に対する鉄道の優位性が活かされていないことや、地域が鉄道を持つことのメリットが十分理解されていないことが考えられる。鉄道の特性としては、大量輸送機関であり定時性に優れること、エネルギー消費が少なく環境負荷が小さいことなどが一般的にいわれていることである。しかし、これらは人口稠密で利用者も多い大都市の鉄道において存分に発揮される特性であり、必ずしも地方の鉄道に要求されるものではない。

北陸でも県庁所在地のような人口30万人以上を有する都市・地域であれば、ある程度の交通混雑は当然ある。特に渋滞が発生する時間帯は、時間通りに運行される鉄道はありがたい存在だ。しかし、それ以外の時間帯や地域においては交通混雑もそれほどではなく、鉄道の存在意義は相対的に小さくなってしまう。

エネルギー消費においても、確かに鉄道は旅客一人当たりでみると圧倒的に小さいものの、環境に全く負荷をかけないわけではない(図3)。通勤ラッシュがあり、特に通学の中高生の利用がある朝夕はともかくとして、それ以外の時間帯は1列車あたりの利用者が20〜30名程度にとどまるケースは路線によっては決して珍しくなく、これはマイクロバス1台で十分輸送できる規模である。

図3 輸送機関別の二酸化炭素排出原単位

グラフ

(「国土交通No.78(2007.6)」)

地方路線で一般的に使用されている気動車(ディーゼルカー)は定員が約90名、重量は約40トンで軽油1リットルの走行距離は1.4kmであるが、例えばマイクロバスの燃費はおよそ6.0km/Lであり燃料消費量は4分の1で済む計算だ。そうなると、むしろ鉄道のほうがエネルギー消費は多くなり、環境への負荷が大きい。少なくとも、地方においては経済効率や環境負荷の点においては、鉄道の必要性は必ずしも高くはないといえる。

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