地域コミュニティと公共交通

地方公共交通に明日はあるか 地域における鉄道の存在意義を考える

地方における鉄道
数値化が困難な分野での存在意義

地方に鉄道が必要な理由は、もっと別のところにあるのではないだろうか。鉄道が存在することは、地域にとってどのようなメリットがあるのか、他の交通機関と比較すると次のように考えられる。

今後、地域間競争の時代を迎え、他地域との相互交流や連携が一層重要なものとなる中で、交通基盤を整備することは、歴史や文化といった固有の資源をPRし地域の魅力を高めることと並んで大切なことである。したがって、その立ち後れが地域の衰退を招くことは容易に想像される。そして、子供や高齢者など誰もが利用でき、いくつもの駅や路線を介し面的な広がり・ネットワークを有するのが鉄道の特色だ。他の交通機関では、利用できる対象・年齢層や交流できる地域が著しく限定されてしまう。

また、航空機や高速バスは鉄道の競合交通機関として発展を遂げているが、ともに2地点間を最短距離で結ぶ交通機関であり、その中間に位置する町や地域は全く無視されている。その点、鉄道であれば、人口や規模の大小、遠近にかかわらず地域と地域を結び、常に相互に交流・来訪が可能であることなどが特色といえる。現実には、乗換えや異なる路線間では別々に運賃を払うといった労が伴うし、何より鉄道では結ばれていない地域も存在する。だが、そのような点を差し引いても、周辺の地域とのつながりが常時維持されているということに、大きな意味があるのではないだろうか。

あるいは、鉄道の駅は電車に乗る場所としてだけでなく、一般に都市や地域の中心近くでまちの核として機能している。その点、空港やインターチェンジ、新幹線単独の駅等は、地域の中心にはなく数キロ以上離れているのが一般的である。また、バス停やバスターミナルは、地域の中心にはあるが施設の規模が小さいことや機能が充実していないことなどが指摘できよう。鉄道の駅は地域の拠点として、いわば地域の顔や交流空間、あるいはランドマークとしての機能を有していると考えられる。

加えて、駅は何十年、ときに百年以上もほぼ同じ場所にあるものだ。人が行き交い活気があふれる場所であり、実際に鉄道を利用していた、あるいは今も利用している住民もいることだろう。そのため、誰もが親近感を抱いたり、安心して時間を過ごせしたりできる対象としてとらえられるのではないだろうか。

数値化や相互比較が難しいところがあるが、鉄道そのものが地域の人々に無形の安心感を与え、さらには駅があることで、鉄道を利用しない人にとっても安らぎの場、心の拠り所を提供できる。つまり、地域に鉄道や駅のあることが、その地域の存立を支えているとの見方が可能だ。その意味で、鉄道や駅は、地域資産あるいは地域資源と言っても過言ではないだろう。

鉄道が地域にもたらすもの
鉄道の存在 駅の存在
  • 地域間連携や相互交流の推進
  • 他地域とのつながりの維持
  • 地域の拠点形成
  • 地域のランドマークの役割
  • 安心して時間を過ごせる場所

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