北陸地域における公共交通の課題と展望

公共交通が北陸の地域づくりを先導する。将来像や課題をしっかり見すえた、戦略的な交通ネットワークの形成が欠かせない。

川上 洋司(福井大学大学院工学研究科教授)

川上 洋司(かわかみ ようじ)
写真:川上洋司

福井大学大学院工学研究科教授

昭和27(1952)年愛媛県生まれ。早稲田大学大学院工学研究科博士課程修了。横浜国立大学工学部講師を経て、1989年福井大学工学部助教授に着任し、現在同大学院工学研究科教授。この間、JICA専門家としてフィリピン大学客員助教授(交通研究センター)等を歴任。専門は、地域・都市計画、交通計画。

福井市都市計画審議会会長等の役職のほか、主に北陸地域各市町のまちづくりや交通プロジェクトに携わる。「福井まちづくりの歴史」、「福井公共交通の歴史」(ともに共編著)等の著書の他、論文多数。

大きなインパクトをもたらす北陸新幹線
圏域と地域それぞれの事前準備が問われる

公共交通は地域づくりと密接に関わっており、北陸地域の将来像を考える上で欠かせない非常に大きな役割を担っている。北陸地域の公共交通について、その機能や役割ごとに現状とこれからについて展望してみる。

まず北陸地域と他の圏域をつなぐ基幹的な公共交通がある。現在検討が進んでいる広域地方計画では、北陸3県(富山、石川、福井)が一つの圏域として位置づけられ、連携して一体的な地域づくりを進めるという考え方が基調となっている。そしてさらに北陸地域が、首都圏や長野、新潟、そして関西圏や中部圏などの外との地域的なつながりを通じて個性を発揮する、あるいは連携・補完しあうことで、活力ある北陸づくりと国土づくりを実現していくという道筋が示されている。

北陸地域を一つの地域としてつなぐこと、さらに他の圏域や地域とのつながりを確保することが重要になるわけだが、道路網と並んで、公共交通の分野で現在これを担っているのがJRの北陸本線である。

北陸本線は滋賀県米原市から、敦賀、福井、金沢、富山、直江津(新潟県上越市)を結ぶ日本海側の鉄道幹線である。北陸地域と関西圏を直結するとともに、直江津からはそれぞれ長野、越後湯沢で首都圏と、また新潟市経由で首都圏や東北地域につながり、広域的な連携において大きな役割を担っている。

その北陸本線よりも一つ上位の鉄道幹線である北陸新幹線が2014(平成26)年度までの開業を目標に整備が進行している。

北陸を一つの地域として考える時、北陸新幹線が首都圏や長野・新潟、そして関西圏などの外との地域的なつながりを大きく変えることは確実だ。富山や石川、そして将来的には福井県が首都圏と直結するわけであり、経済・文化・生活など様々な面で北陸地域そして各県にインパクトをもたらすことはいうまでもない。

新幹線の開業を間近に控えた北陸地域にとって重要なのは、新幹線という非常に大きな力を持つ国土幹線が入ってくることに対して、一つの圏域としてどのような準備を行うかである。つまり新幹線を含めた北陸地域の交通ネットワークの未来図を描くこと、また新幹線を最大限に活用する圏域戦略・地域戦略を考えておくことが重要になる。

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