北陸地域における公共交通の課題と展望

公共交通が北陸の地域づくりを先導する。将来像や課題をしっかり見すえた、戦略的な交通ネットワークの形成が欠かせない。

川上 洋司(福井大学大学院工学研究科教授)

北陸本線をいかに活用していくかが課題
「足し算」で北陸の交通ネットワークを考える

新幹線の整備に伴って「並行在来線」をどうするかが地域にとっての大きな課題となる。これまでの全国の例では、開業とともに在来線の本数は減少することが多く、また新幹線に連絡する形で路線が見直されている。一部には廃線になる例もみられる。

いわば新幹線の開業とともに、地域の鉄道ネットワークには「引き算」の施策が採られているわけだ。北陸でも北陸本線の本数が減ることや、当面金沢あるいは福井で乗り換えるといったダイヤになることが懸念されている。新潟でも新潟市から北陸3県、そして関西圏への直通路線がなくなることを懸念する声があがっている。

北陸地域は首都圏、中部圏、関西圏という三大都市圏に隣接し、その大きな市場を利用できるという点が特性であり強みといえる。その強みを維持していく上では、北陸新幹線が開業して首都圏との結びつきが強くなったとしても、北陸本線という関西圏とのつながりを担保している在来線を残し、地域として戦略的に活用していくべきではないだろうか。

北陸本線の重要性は域外とのつながりだけではない。北陸地域は主要な都市が30分〜1時間程度の間隔で連なるという特色を持っている。特に3県の県庁所在地が40〜50分間隔で並んでいるという地域は全国でも例をみない。北陸本線は道路とともにその連なりを担っているのだ。

さらに、北陸本線は敦賀港を結ぶ貨物支線(敦賀港線)を持ち、主要駅において支線や地方鉄道と連結している。いわば北陸の地域鉄道ネットワークを支える動脈でもある。北陸本線を失う、あるいは本数が減少することは、各地域の鉄道ネットワークの存亡にも関わる大きな問題となる。

北陸という圏域の一体性を確保し、連携による地域づくりを進める上でも、北陸本線を残し活用することの意義は大きい。

図1 北陸本線(特急の所要時間)と主要都市の連なり

( )内は各都市の2008年4月の人口(JR時刻表を元に編集部作成)

これまでの「引き算」の施策に対して、北陸地域では北陸本線をはじめとする在来線を減らすことなく、むしろ新幹線をより活用するためにネットワークとして活性化させていくという視点が重要だと考える。新幹線の開業とともに、北陸地域が利用できる鉄道ネットワークが増えるという、「足し算」の施策を北陸地域が一体となって推進すべきではないだろうか。

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