ふるさと納税は都市部の住民から地方の自治体への寄付金が多くなる、つまり都市部自治体に納められるはずの税金の一部が、地方の自治体に移る仕組みとみられていた。このため都市部と地方の自治体では、取り組みに温度差があるようだ。
例えば、各自治体ともにホームページ上でふるさと納税についての説明や呼びかけを行っている。47都道府県のHPを見ると、トップ画面(一番最初の画面)に目立つように帯状のバナー(帯状の画像。クリックするとその解説ページに入れる)を設置して、積極的にふるさと納税を呼びかけている道府県は20を超えている。それ以外の府県でも専用のページを用意して、解説や寄付を呼びかけている。一方、東京、千葉、神奈川の3都県は担当部局からのお知らせ程度にとどまっている。
また寄付を呼びかけるにあたって、33の府県で寄付金の使い道を示して募集を行っている。これは複数の個別事業を示す方法と、政策分野を示し事業は自治体に任せてもらうという方法がある。
例えば島根県では、8つの石見銀山遺跡の保全や宍道湖・中海の水質保全などの具体的事業を示している。大阪府でも御堂筋イルミネーション基金、大阪ミュージアム基金といったように9つの事業分野を提示している。寄付者は示された事業の中から、自分の寄付金を使ってほしい事業を選択できる。もちろん特に希望する事業や分野がない場合は、自治体に使いみちを任せることになる。
事業や政策分野のどちらも選べるなど明確に分類できないものの、半数以上の府県で事業や政策分野のメニューを示している。(図3)
図3;寄付金の募集と使い道の提示状況
個別事業を示して募集し、寄付者の意向に沿って充当等 | 10府県 |
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政策分野を示して募集し、寄付者の意向に沿って充当等 | 23府県 |
特に使途を限定せずに募集 | 19道県 |
その他 | 4県 |
※東京都を除く46道府県
出典:福井県「ふるさと納税情報センター」ホームページ
北陸4県では、新潟県と富山県が政策分野を示して募集。新潟県には「知事にお任せ」というユニークなコースもある。福井県はメニュー提示していないものの、寄付者から要望を聴取し、要望が高かった分野へ配分するとしている。石川県は具体的な使途の指定は行っていない。(図4)
図4;北陸4県の募集方法
県名 | 募集方法 |
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新潟県 「ふるさと新潟応援寄付金」 |
7つの政策分野から使途選択が可能。寄付者が使途を指定せずに、県に任せることも出来る。
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富山県 「元気とやま応援寄付金」 |
5つの政策分野から使途を選択することが可能。
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石川県 | 特に使途を限定していないが、ホームページなどでは使い道の例として「金沢城復元整備」「音楽文化の振興(音楽祭の開催)」を具体例として提示。 |
福井県 | 県側からの使途をメニュー化して明示することはないが、県が現在取り組んでいる事業をホームページなどで紹介し、寄付者から使途の要望を受付。特に要望が多かった分野に配分している。 |
寄付金の応募状況について新潟県の例をみると、「知事お任せ」が20件ともっとも多く、以下「交流・移住促進」「中山間地活性化」「災害復旧・復興」の順となっている。(図5)
図5;新潟県におけるふるさと納税の使途要望(平成21年1月末現在)
使途 | 件数 |
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①災害復旧・復興 | 10 |
②交流・移住促進 | 19 |
③産品ブランド化 | 4 |
④中山間地活性化 | 11 |
⑤地場産業の振興 | 4 |
⑥少子高齢化対策 | 4 |
⑦教育・文化振興 | 2 |
⑧知事お任せ | 20 |
出典:新潟県ホームページ
同じく福井県では、平成21年度予算案に、平成20年12月末までに受け付けた寄附金2,127万3千円の使途が、寄付者からの要望に基づいて配分・盛り込まれた。子ども自然体験推進事業や高校生の部活動応援事業が要望されていることがわかる。寄付者の各県に対する想いの違いが浮かんでくる。(図6)
図6;福井県のふるさと納税の使途(平成20年12月末領収分)
対象事業 | 配分額 |
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子ども自然体験推進事業 | 7,000,000 |
高校生の部活動応援事業(楽器購入費) | 5,000,000 |
全国植樹祭開催事業 | 4,273,000 |
放課後子どもクラブ拡充事業 | 4,000,000 |
県立図書館ふるさと文学コーナー充実事業 | 1,000,000 |
出典:日刊県民福井Web版 2009年3月8日付