地方分権と道州制-新しい日本のカタチ

スタートした「ふるさと納税」 1年目にみる各県の動向

ふるさと納税をきっかけにより深い関係づくりをめざす

寄付してくれた人たちに対しては、領収書とともに首長からのお礼状を送るのが最も一般的のようだ。しかし、せっかく我が県や我が市町村に関心を持ってくれ、寄付をしてくれた人。これをきっかけに、より関係を深めようと様々な工夫を試みている。

そうした試みを分類すると大きく次の4つに分類できる。

  1. ①「住民」としての特典等を付与・提供
  2. ②特産品等の物品の提供
  3. ③来訪促進のための優待券の提供
  4. ④地域情報の提供

①の住民としての特典等の付与は、いわゆる「名誉住民」あるいは「域外住民」として認定するというもの。住民証や記念証の発行・授与を行うことが多く、その証明書に公共施設の優待など様々な付加価値をつけている自治体もある。福井県では寄付者を「福井ふるさと県民」に認定し、県民パブリックコメントへの参加など、県政への意見表明の機会を提供している。また山口県周南市では寄付者に50枚のオリジナル名刺を進呈。名刺を配布してもらうことで市のPR要員となってもらい、名刺に付いた動物園の半額チケットで来訪促進もねらっている。

②の物品提供については、寄付金額に応じて特産品や記念品を提供するもので、商品PRを兼ねて継続購入をねらう側面もある。

③はモノではなく、宿泊優待などで寄付者の来訪を促進する施策だ。三重県いなべ市では、「ふるさといなべの旅」として市内の宿泊利用引換券やゴルフ場利用券等を組み合わせた旅行券をプレゼントしている。また京都市は地下鉄の1日チケットを提供、その他公園や観光名所、公共施設の入場無料券を送るといった事例が見られる。

④の情報提供は、広報誌やメールマガジンなど継続的に地域情報を提供するケースと、写真集やDVDなどを送るケースがある。どちらも情報提供を通じて、関心を高め来訪を促すねらいがある。ユニークな試みとしては、福岡県みやま市の思い出の写真撮影サービス「ふるさとMYショット」がある。これは、寄付者から市内の思い出の場所や風景を聴取し、市の職員が実際に現場に赴いて写真を撮ってくるというものだ。(図7)

図7;ふるさと納税に関する特典等の分類と事例

分類 自治体 特典
「住民」としての特典を進呈 記念証の発行、名誉称号の授与 福井県 「福井ふるさと県民」に認定し「福井ふるさと県民カード」を発行。県産品の購入優待や、県民パブリックコメントなどを通じた県政への参加が可能に。県内の店舗やホテル、公共施設で利用できるクーポン券付きリーフレットも配布。
北海道
函館市
「函館人証明書」を発行。(特に特典はなし)
北海道
三笠市
特別市民として「こころの市民証」を発行。市民証の提示で、市内の一部公共施設を1年間半額料金で利用可能。また、10万円以上(5年間の累積含む)の寄付で「ゴールド市民」に認定。公共施設の5年間半額利用のほか、市内の商店又は宿泊施設で利用できる商品券(5,000円)を贈呈。
山口県
周南市
「周南志民」に認定し、市が作るオリジナル名刺を50枚進呈。徳山動物園半額チケットが付いており、寄附者に限らず名刺をもらった人も利用可能
山梨県
都留市
「ふるさと都留志民証」を発行。市内の公共施設(6ヵ所)が市民料金で利用可能
住民限定の権利を付与 北海道
池田町
町民限定ワイン「町民還元トカップ」の購入権利を付与
福井県
(重複)
県民パブリックコメントなどを通じた県政への参加が可能に。
物品提供 特産品や記念品の提供(多数の自治体が実施) 福井県
若狭町
自然や伝統行事をデザインしたオリジナル切手シートや瓜割名水米や梅酒、梅ワイン、地元産米など。
新潟県
阿賀野市
新潟産コシヒカリ瓢湖米5kgなど18の品目から1つを選択
富山県
氷見市
特産品詰合せ(氷見の米「ひみ穂波」、氷見牛カレー、氷見はとむぎ茶など)
奈良県
大和郡山市
①金魚と飼育セット②金魚土鈴と赤膚焼(湯飲み)③大和郡山のお酒(720ml×3本)④大和郡山治道トマトジュース
来訪促進 宿泊優待など来訪促進 三重県
いなべ市
市内の宿泊利用引換券やゴルフ場利用券等を組み合わせた「ふるさといなべの旅」(寄付額により2段階にグレード分け)
京都府
伊根町
5,000円相当(送料込み)のふるさと伊根町へ訪れた際の「町内での宿泊費の補助」、または「ふるさと産品」
京都府
京都市
「京都市営地下鉄1dayフリーチケット」「地下鉄沿線エリアマップ」を贈呈
公共施設等の利用サービス券 福島県
会津若松市
「鶴ヶ城通行手形」を贈呈。「鶴ヶ城天守閣」及び「茶室麟閣」への入場料が無料。有効期間は1年間。
石川県
小松市
小松市内の美術館・博物館、勧進帳ものがたり館、粟津温泉総湯、せせらぎの郷浴場のペア入場券、及び「広報こまつ」を1年間送付
情報提供 地域情報の提供 多数の
自治体
1年間の広報誌送付、県勢要覧の送付、メールマガジン登録など
郷土写真・DVDなどの送付 福岡県
みやま市
寄付者から市内の思い出の場所や風景を聴取し、職員が写真を撮影し、CDに収めて送るサービス「ふるさとMYショット」。
香川県 香川の自然や文化、こだわりの食などを紹介した観光PR用DVD「美のチカラ」

出典:各自治体ホームページ等を元に編集部で作成

こうした特典の提供は市町村の方が積極的に取り組んでいるようで、北陸4県でみると県としては特産品の提供などは行っていない。感謝状や広報誌、観光ガイドなどの情報提供が中心となっている。(図8)

図8;ふるさと納税に関する北陸4県の特典

県名 特典
新潟県
  1. 礼状
  2. 領収証書
  3. 「ふるさと新潟応援団」登録証と定期的な新潟県情報
  4. 10万円以上の寄附で県知事からの感謝状 等
富山県
  1. 礼状
  2. 領収証書
  3. 県PRパンフ等
  4. 富山ファン倶楽部申込書(県人会的な組織)
石川県
  1. 礼状
  2. 領収証書
  3. 県広報誌「ほっと石川」(1年間送付)
  4. ガイドブック「ぶらり能登」
  5. 県政便覧「いしかわのガイド」
福井県
  1. 礼状
  2. 領収証書
  3. 「福井ふるさと県民カード」県民パブリックコメントなどを通じた県政への参加権
  4. 福井県観光・特産品リーフレット(掲載店舗等特典クーポン付)
  5. 福井の情報メルマガ申込書

出典:各県ホームページ

福井県は物品を送ることに対しては、「趣旨に反する」と否定的で、店舗や公共施設のクーポンを配布することで、「自治体が直接出ず、民間とつながる関係づくりを進める」(西川県知事)としている。石川県は「競争をあおる」として謝礼進呈に否定的な立場をとっている。

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