地方分権と道州制-新しい日本のカタチ

本格化する地方分権の議論。道州制の青写真の検討とともに新たな社会システムの設計が始まっている。

増田 寛也(前岩手県知事、前総務大臣)

増田 寛也(ますだ ひろや)
写真:増田 寛也

前岩手県知事、前総務大臣

昭和26(1951)年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、建設省入省。平成7(1995)年岩手県知事に当選。以後平成19年まで3期12年務める。平成19年内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理に就任。同年8月に安倍改造内閣で総務大臣、内閣府特命担当大臣(地方分権改革)、地方・都市格差是正、道州制、郵政民営化を担当。福田内閣でも総務大臣、内閣府特命担当大臣(地方分権改革)、地方再生、道州制、郵政民営化を担当。平成20年9月大臣退任。

地方の声が届かないわが国の行政システム
都市部の意向で進められる国政の運営

私は昨年9月に総務大臣を退任したのだが、ちょうどその頃、米大手証券会社のリーマン・ブラザーズが経営破綻した。このいわゆる「リーマン・ショック」後、世界的な金融恐慌の影響が顕在化し、わが国の製造業や建設業の業績悪化や派遣労働者の契約解除、消費の手控え等を通じて地方経済へも影を落としている。

こんなとき、地方経済を救うために、是非皆さん方にも声を上げて国を動かしていただきたい。例えば、110近くある地方銀行・第二地方銀行全てに公的資金を受け入れていただき、地域に血液を回すことで少しでも経済を良くしていく必要があるのではないか。地域に今何が必要なのかをいろいろな場面で発信していただきたいと思う。

今あえてこんな例示をしたのは、総務大臣就任中、最も腐心したのが、生の声を地方から中央に届けることだったからである。国政を司っているのは中央省庁の官僚であるが、普段霞ヶ関でデスクワークをしている人に、どうやって地方に相応しい政策を実現してもらうのか。国会議員に地方の声を伝え、国会で審議していただくことになるのだが、総人口のうちの過半数は三大都市圏の居住者で占められているがゆえ、国会議員も東京をはじめ大都市出身の人が多いのだから、それは容易ではない。

総務大臣になる前、知事を3期12年務めた岩手県は、北海道を別にすれば最も広い面積を有する県であるが、国会の衆議院小選挙区は4区までである。北上川沿いの内陸部と三陸海岸に面した沿岸部とでは、生活水準や社会資本の整備状況も同じではなく、地域ごとに異なる住民の要望を聞き入れる側が4人では、あまりに数が少ない。

ところが、私は今住まいを東京に移して23区内に住んでいるが、東京都は実に25区まで選挙区が分かれているし、大阪府も19区まであり、これに比例代表を入れると、岩手と東京や大阪との差は更に広がることになる。そのため、国政の方向としては、どうしても東京や大阪などの選挙民の意向に影響を受けやすい。国会議員の人たちには地域の声や実際の姿を知っていただくため、地方社会にももっと目を配り地域を支えていくために、わが国の社会システムは新たな設計図に沿った新しいものとして再構築していく必要に迫られている。その設計図の基本的な考え方が、地方分権と道州制である。

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