地方分権と道州制-新しい日本のカタチ

本格化する地方分権の議論。道州制の青写真の検討とともに新たな社会システムの設計が始まっている。

増田 寛也(前岩手県知事、前総務大臣)

道州制の実現のため、解決が待たれる課題とその素地をつくる地方分権

一方で、道州制に対しては懸念の声があるのも事実だ。まず、地域ブロックがいくつも出来てくると国家としての統一性が失われるのではないかという指摘がある。しかし、これは全く逆で、これまでほとんどなかった国家戦略を中央政府で戦略的につくりあげていくのだから、むしろ統一性が強まると思う。

地域ブロックのエンジンへの一極集中が一層加速し、縁辺部との格差が生じるのではないかという指摘については、確かにその可能性は考えられるものの、アメリカの州の多くでは行政の中心である州都と経済の中心とは同一ではないことをご存知だろうか。経済合理性の観点に立てば、既存集積のある都市がさらに巨大になり経済の中心となっていくのはありうるが、行政の中心は全体のバランスを考慮して配置していくことで、この問題は解決できる。

新聞社や県域免許のテレビ局など、民間企業では都道府県の区域をマーケットとしているところが多いので道州制移行で影響があるとの声があるが、国の一律の規制が解かれ地域経済の活性化が図られるので、商機が拡大すると考えられる。地域の伝統や文化に関するところ、郷土意識や一体感の維持といった問題については、行政の支援や地域の自主的な活動を通じて、残していくようなことが必要だと思う。

今後は、道州の知事の権限は都道府県よりも強大となるため、多選で力を持ちすぎることのないよう法律による任期制限等の民主的統制が必要なこと、現在の中央省庁の解体的再編が必須で国家運営を司っていく新たな体制に切り替えること、税財源調整問題について詳細な制度設計が必要であること、憲法改正が必要でありわが国では過去になかった連邦制国家をつくるかどうか、等が検討を要するところである。

そして、これらに先んずる形で検討を要するのが、地方分権改革の推進である。それは、道州制の概念として国の出先機関は道州に一体化する方向の分権型道州制が提唱されていることからその導入をスムーズにするためであるのと、道州制は統治機構の大幅な改変であり手続きと時間が必要で、その間にも地方分権を進めていくためである。

今こそ地域が立ちあがって、そして国政に声を届けて、経済を回復させ地域を豊かにしていく、そして日本全体をよりよくしていく。地域の方々が、真剣に地域の明日を考え、行動されることを期待する。

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