地方分権と道州制-新しい日本のカタチ

本格化する地方分権の議論。道州制の青写真の検討とともに新たな社会システムの設計が始まっている。

増田 寛也(前岩手県知事、前総務大臣)

新しい日本のカタチをめぐる議論
直近の各種構想にみる道州制の意義

第28次地方制度調査会の答申後、道州制の検討はどこまで進んでいるのか。現在は、内閣官房で道州制担当大臣の下、政府の諮問機関のような役割を果たしている「道州制ビジョン懇談会」、道州制基本法の検討等を行っている自民党の「道州制推進本部」、経済界の立場から道州制の導入を推進している日本経団連の「道州制推進本部役員会」という3つの検討主体がある。これらは、細部で相違点があるが、地方分権の推進を目的とすることやいくつかの地域ブロックに分かれること、行政上の権限の重複を解消することなど、大まかな方向性では軌を一にしている。

いずれも昨年、報告・提案を発表しており、それらによる報告も参考にしていえば、道州制を導入することの意義やメリットとして次のようなことが想定される。権限移譲に関係するところでは、都道府県がしている仕事を市町村が担い、国の権限が道州に移ることとされている。この結果、行政サービスがより住民の目線に近いものとなることで、住民ニーズに即した事業や施策を実現したり、地方自治の強化につなげたりすることが可能だ。

国は国家運営の根幹の部分である国防・外交といった施策分野を担うことで、都道府県の行う事業との重複や競合を排除することができる。例えば、一般道と同じ地域に農道が整備されている場合があるが、前者が国土交通省または地方自治体、後者は農林水産省という具合に別々の所管であるのが原因であり、地方が一括してその任にあたれば二重行政を解消できる。限りある財政事情を考えれば、少しでもスリムな体制にするのが望ましいのは言うまでもない。

1つの県ではできなかったような大規模な施策が可能となることも挙げられる。例を挙げると、岩手県知事だった時代、青森・秋田と北東北3県として、共同で温泉やスキー場、県産品のPR活動を行ったり、福岡に3県共同のアンテナショップ「みちのく夢プラザ」を開設したりした。競争相手となる隣接県と呉越同舟の形になったのはコストや人員体制の事情によるのだが、1県単独でするよりPR効果があることも確認されていて、道州制も同じように規模の持つメリットを活かせると考えられる。

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