除雪における「新たな公」の導入を検討するにあたり、特定の中山間・積雪地域を対象に住民、行政、除雪業者に聞き取り調査を実施した。
これまで地域の道路除雪を担ってきた建設業者は、近年の公共事業削減により人員削減が行われ、道路除雪の人員が確保できなくなりつつある。また、除雪機械は、購入費、維持費を賄うだけの収益が上がらず、更新もままならない。
このような状況から建設業者の道路除雪事業からの撤退、廃業が懸念されている。
請負能力のある建設業者が複数ある都市部では、代わりの担い手確保も可能であろう。しかし、中山間地では、建設業者が少なく(地域によっては1社のケースも)、そこが撤退・廃業すれば除雪体制の維持が困難になる。
道路除雪機械オペレーターの高齢化や技術の伝承も深刻な問題である。公共事業削減の煽りを受け若年層の新規雇用が見合わされ、オペレーターの高齢化とともに、数十センチ単位の細かな操作といった技術が伝承されず、結果的にサービスレベルの維持が難しくなる。
一方、除雪支援対象の要援護世帯は、今後も増加が予想される。
表3 現況の除雪問題点
問題点 | |
---|---|
道路除雪 | 公共事業の削減による人員削減のため業者の撤退、廃業 |
除雪機械の保有コスト、少雪による除雪委託費の減少による業者撤退、廃業 | |
少雪に合わせた除雪体制をとっているためゲリラ豪雪に対応できない。 | |
除雪の不備で事故が起こった場合、担い手の責任所在の明確化。 | |
それぞれ行政管轄ごとに作業者、機械を分けているため効率が悪い。 | |
除雪機械オペレーターの高齢化 | |
道路除雪業者 | 道路除雪を行う操作技術が必要であるが若い世代に継承されていない。 |
雪の少ない地域の除雪業者は、実践的な技術を磨く場がない。業者間は利害関係があり技術指導ができない。 | |
老朽化しても買い換えるだけの利益が無いので機械更新できない。 | |
福祉除雪 | 対象となる要援護世帯が増加し続けている。 |
周辺住民、親類縁者に頼るやり方では、担い手の高齢化により成り立たなくなる。 | |
福祉補助は、1軒あたりの回数に制限があり豪雪時は足りなくなる。 | |
住民 | 将来の担い手不足の認識が無い。何とかなると思っている。 |
中心市街地を中心に住民からの苦情が増加している。 | |
集落によって積雪量や家屋形態が違うので地域を1つにまとめるのは難しい。 | |
その他 | 別々の予算で担い手が除雪しているので、将来予想される予算削減、担い手不足に対応できない。 |
これまで集落の共有施設や要支援世帯の除雪は、親類縁者、地域住民の協働で担ってきたが、住民の高齢化が進み、いずれ対応が難しくなるだろう。近隣地域の除雪業者に依頼したくても、限られた除雪補助金では制限がある。
以上のことから現在は、除雪の担い手が確保されている地域でも、今後、担い手の高齢化と、新たな担い手の確保が問題となるだろう。