地域指標

「新たな公」による北陸の地域づくりの調査研究

2010.3

北陸地域づくり研究所

5. 「新たな公」による地域除雪システム

写真1 中山間地での除雪ボランティア

除雪に関して地域の現状調査でわかってきたことは、中山間地では地域コミュニティと地元業者により除雪が担われているケ-スが多い。

ただ、担い手は住民が中心で、今後、少子化、高齢化により住民だけで対応出来なくなった場合、どのような形で地域外からの人材を確保するかが課題となってくる。

特に除雪は、道路、公共施設、公共空間、個人宅と領域によって違った技術が必要であるため、外からの担い手確保が難しい。

そこで、「新たな公による地域除雪システム」構築の取組みとして、資金、担い手という面から提案する。

(1)地域経営から見た人材確保と資金

中山間地は、地域住民が助け合う「共助」により地域を維持してきた。しかし、少子化、高齢化により住民だけでは対応困難な地域が増えている。

地域を維持していくためのポイントは「共助」を引き継ぐ人材が生まれていくかである。

人材確保には、その地域で「生業」を創り出し資金を得る地域経営が必要である。

例えば冬場の除雪は、道路除雪費、公共施設除雪費、要援護世帯への家屋除雪補助など様々な資金がある。

そこに、住民負担(サービスを受ける自己負担)やふるさと納税等の外部からの寄付、支援金を集めれば相当額の除雪作業運営のための資金が確保できる。

当然、除雪を「生業」としている地元住民の収入を侵すものではなく、住民だけでは足りない部分で、どのように人材を確保するかだ。

冬以外でも、中山間地に落とされるお金は意外に多くある。農産物販売、ツーリズムなどの観光消費などの産業、高齢者の見守りや介護等の福祉、公共交通、子育て支援などのサービスに対する助成である。

今ある地域のコミュニティを地域外支援者の協力で「新たな公」に再構築することで、地域内外から広く様々な方法で資金を集める受け皿とし、担い手の人材確保を行う地域経営としての視点が必要である。

図3 地域経営からみた担い手人材確保イメージ

(2)地域除雪システムの概要

住民代表(区長など)、行政関係者、有識者、支援組織等、地域の除雪に関わる関係者等による例えば「地域除雪協議会」といった合意形成の場を設立する。この協議会は、地域の除雪に関する計画策定から、担い手の確保、除雪の実施や会計処理まで、地域除雪を推進する中枢組織と位置づける。

協議会は住民の声や地域状況を踏まえながら、今後予想される課題に対応できる地域除雪システムや事業を検討・計画し、関係機関との調整や資金調達に取り組むなど、実現に向けての活動を行う。また住民に対しての説明や、負担等についての合意を形成することも大きな役割となる。

この協議会の実務部分を支えるために、住民の会員化による「自己負担」「自己責任」を原則としたNPO法人等の地域支援組織をつくる。実際の除雪関連事業を企画・実施・管理する組織体を形成する。

これまで通り可能な限り住民が自ら行うための掘り起こし、ネットワーク化と共に、地域外の方から次の方法で協力を得る。

① 移住希望者の直接雇用

前段の地域経営で得られた資金を原資にして、地域コミュニティから再構築された「新たな公」が中山間地の地域力維持のために働いてくれる人材を地域内外から募集し、雇用する。

中越大震災復興基金の支援により創設された「地域復興支援員」や総務省が推進している「地域おこし協力隊」のように、地域外から中山間地に移住し、地域のための様々な活動に従事する者もいる。

この場合、除雪作業のための訓練が欠かせないので地元住民や除雪業者の協力を得て育成する。

これは、地域で育んできた除雪技術を次世代に継承するという目的もある。

② ボランティア

ボランティアは、豪雪時に日々の除雪担い手で足りなくなった非常時に力を借りるべきものである。

除雪は、不慣れなボランティアでは危険であるため、平時に訓練してもらう機会をつくり顔の見える関係を築くことも必要である。

また、地域交流という意味からツーリズムや農業、福祉など冬以外の地域を支える応援団となる可能性を持っている。

図4 新たな公による地域除雪の活動領域と担い手のイメージ

(3)除雪に関する人材育成・技術継承の拠点化

近年、懸念されている建設業者の廃業や除雪からの撤退、除雪機械オペレーターの経験不足は、地域全体の除雪能力を低下させる要因となる。一定のサービスレベルの維持には、除雪機械オペレーターの技術力が欠かせない。

しかし、公共事業等の工事受注に関して建設業者同士はライバルとなるため、業者間の除雪技術の伝承は皆無である。一方、今冬の新潟市のような局地的なゲリラ豪雪に対応するためには、道路除雪を常に実践できる機会が必要である。

そこで毎冬常に積雪が見込める中山間地域を除雪機械オペレーターの実践訓練・教育の拠点とすることを提案したい。

「新たな公」により実践訓練・教育の拠点が運営されれば、地域の除雪担い手の一部として活用できるとともに、除雪技術の継承が行われ周辺地域も含めた除雪能力の維持にもつながる。まさに、「街なか」が「山」に学ぶということである。

今後の局地的なゲリラ豪雪の対策として中山間地を拠点に市街地への広域支援を行う地域の除雪センターの役割も期待される。

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