日本は再成長できる-成熟国の企業と地域戦略

再成長にはエンジンが必要。アジアの成長力に注目しつつ日本そして北陸の底力を発揮する。

嶌 信彦(ジャーナリスト)

「クール・ジャパン」と北陸地域の可能性

1997年に登場したイギリスのブレア首相は、「老大国イギリス」のイメージを刷新すべく、「クール・ブリタニア(カッコいいイギリス)」をキャッチフレーズに、国家ブランド戦略を展開した。新進気鋭のアーチストや映画監督、デザイナーなどを積極的に発信し、若くてカッコよくて世界の新しい文化をリードするイギリスというイメージを形成することに成功した。

日本でも2000年の前後から、アニメやゲームなどの若者文化が国際的に評価されていることから、「クール・ジャパン」という言葉が見られるようになった。

この「クール・ジャパン」という言葉をもう少し広く捉えると、上質で上等、繊細で優雅、安全で安心、個性的でセンスにあふれる、などプラス0.5次化の産業と重なってくる。日本の再成長は広義に捉えた「クール・ジャパン」を目指すことと言い換えられるかもしれない。

さて再成長に向けて新潟、そして北陸地方はどのように取り組むべきか。私は、北陸地方は大きなチャンスを迎えていると思う。

EU同様に世界各地で地域共同体を形成しようという動きがある。アジアでも日中韓の東アジア3カ国とASEAN10カ国でアジア共同体を作ろうという構想がある。このアジア共同体は、2010年で人口が21億人、市場規模は12.8兆ドル。欧州連合が人口5億人で市場規模12.7兆ドルなので、市場規模はほぼ同じで、人口が多い分成長力が期待できる。実際に2014年には市場規模が17.3兆ドルに拡大し、アメリカの17.4兆ドルに並ぶという予測もあるほどだ。

アジアの21億人のうち、ある程度の購買力を有する(年間50〜350万円の可処分所得を持つ)中間層は現在のところ8億人。中国だけで4億人を超える。これが2020年には14億人になる。非常に大きな市場が出現する。このアジアの成長性こそが「21世紀はアジアの時代」といわれる所以だが、世界中がこの巨大な市場に注目している。

そしてその時に日本海側は間違いなく成長の時代を迎える。中国に向けてこれまで以上に物流が増えれば、新潟、富山、石川、福井などの日本海側の港が使用される。物が動けば一緒に人や金も動く。アジアに面しているというのはそれだけで力になるのだ。

かつてアメリカがヨーロッパとの交易が多い時代には、大西洋に面した東海岸の都市が栄えたが、アジアとの交易が増えるにしたがって太平洋に面した西海岸が開発され、いまや西海岸の方が経済も発展している。日本でも同様にアメリカとの貿易よりアジアとの貿易が拡大し、太平洋時代から日本海時代がくることになろう。

アジアの時代に新潟そして北陸地方が優位に立ち、発展を実現していくために、ハブ港にもなる港湾の整備が重要だと考える。

日本そして北陸地方は再成長が可能だ。文化や伝統、技術や場の力(立地条件)などを見つめ直し、再成長のための新たなエンジンを用意する必要がある。アジアの成長力を捉えて、「クール・ジャパン」あるいは「クール北陸」を展開していくことを期待したい。

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