国土学からみた北陸の地域づくり(上)

脆弱な国土と厳しい自然条件。北陸も日本もたゆまぬ働きかけで安全と競争力を確保していく必要がある

大石 久和(財団法人国土技術研究センター理事長)

諸外国に比べてハンディキャップを持つ国土構造

一方諸外国をみてみると、例えばベルリン、パリ、ロンドン、ニューヨークといった大都市は固い地盤の上に成り立っている。おまけに大地震もまったくない。したがって高層ビルを建てる時にも、地下部分の土壌改良や基礎工事などは、日本に比べてはるかに簡単にすませることができる。つまり同じように、国土に働きかけて高層ビルを建築するのに、日本の方が諸外国に比べて時間も手間もコストもかかってしまう。

道路を造るのでも日本の場合には少し行くとすぐに川や山にぶつかり、橋やトンネルを造らねばならない。平野や緩やかな丘が広がるヨーロッパやアメリカに比べて、手間や道路以外の技術・費用が必要となる。日本はインフラ整備の費用が大きいといわれるが、日本の国土の特性を考えると仕方がないのだろう。しかし国際競争力という点からみるとこれは大きなハンディキャップとなる。

先に日本は一級水系だけでも109あると紹介したが、その分布状況をフランスのそれと比較してみると、日本の国土の脆弱さやそれがもたらす高コスト構造は一目瞭然だ。日本人は何と不幸な国土に生まれてしまったのだろうと思わざるを得ない。

しかし、こうした脆弱で厳しい自然条件を持つ国土にたえず働きかけ、克服する過程で日本人は勤勉な国民性を涵養してきた。一生懸命造ったまちや道、田畑も、一たび川が氾濫したり、地震が一揺らしすると全部壊れてしまう。それでも投げださず、ゼロからもう一度やり直して頑張ろうという国民性だ。

今日の日本の繁栄とは、勤勉な国民性を育みながら自然を克服し、世界の民と競争しつつ生きていくために、たえまなく国土に働きかけてきた先人たちの努力によってもたらされたものなのである。

日本とフランスの国土(自然条件)の違い

◇一級水系分布図(日本)

全国一級水系分布図

日本の一級水系の流域面積合計:246.869km2

(大石氏作成資料)

◇一級水系分布図(フランス)

(大石氏作成資料)

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