国土学からみた北陸の地域づくり(上)

脆弱な国土と厳しい自然条件。北陸も日本もたゆまぬ働きかけで安全と競争力を確保していく必要がある

大石 久和(財団法人国土技術研究センター理事長)

諸外国に比べて厳しい自然条件 闘いから始まる国土づくり

日本の国土は諸外国に比べて脆弱だ。険しい山地(脊梁山脈)が中央を走り地域を分断しているし、急峻な地形で平野が狭く急流河川が多い。地盤は軟弱で、4つのプレートが集まる場所のために地震が多発する。その上に、多雨や台風、豪雪という厳しい自然条件が加わり、様々な自然災害が毎年のように全国各地で発生している。

日本の都市の多くは、河川の河口部に生まれた平地に建設されていることから地盤が軟弱だ。新潟市もかつて信濃川が流れていたところに位置するため、少し掘れば水が出てくるし、地震が発生すれば液状化現象が起こりやすい。さらに新潟市の年間累加降雪深は4メートルを超えている。都市の安全性という点ではきわめて脆弱といわざるを得ないが、そこに80万人以上の市民が暮らしている。こんな都市は世界のどこにもない。

自然災害だけではなく、日本列島は海峡で分断された4つの島と多数の島嶼部で形成されており、往来には海上交通が不可欠で相互の交流は簡単ではなかった。また一級水系だけでも109を数える日本の河川は、陸地を切り分け地域を分断している。

日本は国土の中央に脊梁山脈があるので、雨は分水嶺によって馬の背を分けるように山の両方に流れ、日本海側と太平洋側に2つの川(水系)を形成する。列島の形状に沿って山地が連続しているので分水嶺も多く、川の数も多くなる。海岸沿いを移動すれば次々に川が現れ、それ越えるには橋か船が必要になる。一方2つの水系を生み出している脊梁山脈を越えるにはトンネルが必要だ。

それほど広くはない国土だが、相互に往来するだけでも様々な働きかけをしなければならない。また軟弱な地盤や急流河川、地震や雨、雪といった国土条件・自然条件からは、まず治山や治水、地震対策等を講じ、その上で道路や空港・港湾・工場等のインフラストラクチャを整備しなければならない。

日本における国土の働きかけは、まず自然との闘いであり、自然を克服することからスタートすることになる。

●日本と海外諸国の違い―脆弱な国土と厳しい自然条件
1. 国土形状 南北2,000km、東西2,000kmに及ぶ細長い国土
2. 日本列島 海峡による陸地(4つの島)の分断。多数の島嶼部
3. 脊梁山脈 国土の中央部を山地が分断
4. 平野 海岸線への狭い平野の連なりと山間盆地(低地:12.7%、台地:11.9%)
5. 軟弱地盤 大都市のほとんどが軟弱地盤の上にある
6. 地震 日本とその周辺で世界の地震の約10%が発生
7. 豪雨 多雨:降雨の集中(年間平均降水量:1,600〜1,800mm、地球の総平均の約2倍)
8. 急流河川 河川勾配が急(日本海側に多い)
9. 豪雪 国土の6割が積雪寒冷地域(多くの都市が年間累計降雪深4m超)

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