我が国における北陸地方の特徴としては、日本列島のほぼ中央に位置し三大都市圏のいずれとも近接するという地理的優位性を持っている点が指摘できる。また、新潟市から福井市まで人口10万人以上の8つの都市が連なり日本海国土軸の中枢圏域を形成しているが、中でも富山市、金沢市、福井市と3つの県庁所在都市がわずか136kmの間に並んでいる。
一方、対外的には、著しい経済成長を遂げているロシア、韓国、中国といった対岸諸国と向き合う位置にあるが、北陸地方からはこれら北東アジア諸国・諸地域に国際線や国際コンテナ航路が定期航路として開設されており、我が国のゲートウェイ(玄関口)として機能している。
北陸の人口1人当たりの付加価値額は地方圏としては相対的に高いことに加え、一人当たり県民所得は近畿圏と並んで全国で最も高い水準にあり、工業力の強さを背景に地方としては非常に豊かで生活に適した地域と考えられる。
自然や気候の面では、急峻な山岳地帯を抱える地形上の特性によって、冬季のシベリアからの季節風の影響を強く受けることから国内でも特に積雪が多い。だが、そのことで、信濃川、阿賀野川、神通川、庄川、黒部川などの大河川の流れが水の恵みをもたらし、豊富で清冽な水資源を農業用水、発電用水、工業用水などとして安定的かつ有効に利用できる環境にある。
水力発電に必要な包蔵水力では、富山県(105億kWh)が全国一であり、以下、長野県(93億kWh)、岐阜県(90億kWh)、新潟県(88億kWh)と続いている。また、原子力発電所の立地も見られ、まさに我が国有数のエネルギー供給基地となっている。
図5 北陸の主な特徴と新たな時代変化
今、北陸には、新たな時代変化の波が押し寄せつつある。
第1の変化は、北陸新幹線の金沢開業による時間距離の短縮である。例えば、上越市と金沢市の間は現在およそ1時間45分を要しているが、今後はおよそ1時間となり、3時間30分かかる長野市と金沢市は1時間30分で結ばれるようになる。ビジネスや買物で日常的に往来できる距離となり、交流人口が大きく増える可能性が出てきたという変化である。
第2の変化は、地理的に近接する対岸諸国の世界経済における台頭である。東京〜名古屋〜大阪と広がる三大消費都市経済圏と、BRICsを構成するR(ロシア)とC(中国)を結ぶ線上に位置するのが北陸である。このことは、貿易や人的交流などにおける我が国とロシア・中国とのゲートウェイとして機能する可能性が高まりつつあるということである。
第3は気候の変化である。降雪によってこれだけの降水量を有するのは、一定の人口を有しある程度の規模を持つ都市としては、国内はもとより世界的に見ても他に例がない。ところが、気温の上昇と海水面の上昇が進行することで、北陸は降雪量が少なくなり、しのぎやすい風土になりつつある。
このことは、青森県や北海道で耐雪・克雪技術の必要性が今後高まることを意味するが、これらは北陸に蓄積されているものであり、その技術移転を図ることが北陸の役割といえる。
また、近年の度重なる巨大地震による被災経験から得られた防災や復興ノウハウは、三大都市圏を中心に活用が望まれるものとなるだろう。加えて、福井県と新潟県には日本の約半数の原子力発電所が立地しており、その安全対策に関する技術は広く世界から希求される可能性がある。
このように、新潟を含む北陸地域は、対岸地域と三大消費都市経済圏を結ぶ扇の要として、新たに望まれ始めた情報発信や救災基地として、全国に全世界に発信する役割を持ち始めているように見える。