『地方の自立』に向けては、現在、各県単位で様々な取組みが行われているが、一つひとつの県がフルセットで取り組むのではなく、連携・相互補完によってより効率的でかつ効果的な方策が想定されると考え、本研究に取り組んだ。
研究会は、富山、石川、福井、新潟、長野の各県の大学や研究機関から、このテーマに高い関心を持った方々で構成したが、特に今回は、国土形成計画や道州制など政治や行政の枠組みの議論とは別に、民間の立場から、北陸が連携によって、より効果的に自立し、アイデンティティを高める方策について、住民の日常生活面の視点を大切にしながら多角的な分析を行った。
例えば、文化面では、地域の歴史、宗教、民謡(盆踊り等)、食文化などの風俗・習慣、環境面では、何気ない日常会話の『今年は山に雪が降っているからいいよね』などにみられる水資源、産業面では多店舗展開するチェーン店の立地状況、さらに、高速バスを含めた地域交通、観光、メディア、災害対応まで、身近な素材に重点を置いて、多彩なテーマを扱った。
本稿は、研究会メンバーの研究レポートを中心に、概括的な提言を試みた報告書の「概要」であるが、広域連携としては、「まとまりが強く、連携に適した地域である北陸三県」に、「同じ日本海に面し、気候や風土の共通性が高い新潟県」、さらに、「高いイメージと多様性の源で、関東地方、中京地方と北陸地方を結ぶ長野県」が連携した北陸の将来は明るく、住民は自信を持って、苦手な情報発信に取り組むべきとの結論である。
今後ますます、地域の自立と広域的な取組みによる問題解決が強く求められるなか、今回のような住民の目線での研究を一層深めることが重要であるとともに、対話を含め、地域住民に対し、明日の北陸を考える素材を提供していくことが必要との思いを強くしているところである。
本報告は、(社)北陸建設弘済会が実施している「北陸地域の活性化に関する研究助成事業」のプロジェクト助成研究の一つである、プロジェクトII「北陸地域の自立に向けた方策の検討」の平成19年度の活動成果を取りまとめたものである。
今回は、地域の自立という視点から、北陸三県を基軸にさらに広域な連携を図ることのメリットやその方策、解決が待たれる課題等について調査研究を行った。特に、社会資本・交通インフラ整備は地域間連携に不可欠な存在であり、中でも北陸新幹線の金沢開業は企業活動や産業振興、観光など多方面への効果が想定されるが、一方で地域公共交通の再編整理や交通機関間の連携を図ることが新たな課題として確認された。これを踏まえ、平成20年度は、北陸新幹線開業を機に、公共交通基盤と広域な地域連携の促進について考えていくこととし、引き続き調査研究を継続する予定である。