2003(平成15)年から2005(平成17)年をピークとする「平成の大合併」では、3,232を数えた市町村が1,771へとほぼ半減した。(図3)
図3;平成の大合併における市町村数の変遷
(3月31日現在の市町村数、平成21年は2月1日現在)
平成の大合併の目的の一つは、地方分権改革の推進に向けて基礎自治体を強化することにあった。人口減少時代を迎え、地方の小規模な市町村では税収が落ち込み、地域経営が困難になることが予想された。これを予防するために、合併によって財政力や人口規模を高めることを目指したわけだ。また政令市や中核市を増やして、権限を委譲しやすくするという狙いもあった。
平成の大合併を促す力となったのは、各自治体の危機感とともに、地方分権一括法による「市町村の合併の特例に関する法律」の改正(2000年4月施行)があげられる。
この改正では、地方交付税の合併算定替の大幅延長や合併特例債の創設といった合併を促進するための財政上の優遇措置が盛り込まれた。こうした優遇措置(=アメ)の一方で、国から地方に配分される地方交付税は削減され(=ムチ)、この二つの方策により合併は進んだとされている。
2005(平成17)年3月に、それまで10年ごとに延長されてきた合併特例法(旧法)が失効。替わって4月から「市町村の合併の特例等に関する法律」が施行された。
この新しい法律では、合併特例債にみられたような「財政支援措置による合併の推進」から、「合併に関する障害の除去」へと方針を転換。合併特例債に替わって設けられた合併推進債は、合併の障害を除去することを目的としているため、合併前の自治体にのみ適用され、元利償還金の普通交付税措置も大幅に縮小されている。また、合併前後の普通交付税の差額を補償する合併算定替も、段階的に縮小されることとなった。(図4)
図4;合併特例法の旧法と新法(現行法)との比較
<旧法> | <新法(現行法)> | ||
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名称 | 市町村の合併の特例に関する法律 | 市町村の合併の特例等に関する法律 | |
期間 | 1965年3月施行(以降10年ごとに延長)
→2000年4月改正法が施行(合併特例債等の財政措置による合併促進) →2005年3月31日失効(2005年度1年間に限って経過措置として優遇措置を継続) |
2005年4月1日施行 →2010年3月31日失効(経過措置期間なし) |
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合併特例債 合併後10カ年度は市町村建設計画に基づく特に必要な事業の経費に合併特例債を充当(95%(公営企業に係るものは100%))。元利償還金の70%を普通交付税措置。 |
→ | (合併特例債は廃止) 合併推進債 合併に伴って特に必要となる事業(自治体間の道路・橋梁・トンネル、電算システムの統合など。原則一事業のみ)に対して合併推進債を充当(90%)。元利償還金の40%を普通交付税措置。 合併後の起債は不可。合併後に共に返済義務を負うことになる関係市町村の同意が必要となるなど、起債のハードルが高くなっている。 |
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合併算定替 合併後10カ年度は、合併がなかったものと仮定して毎年算定した普通交付税の額を保障。 さらに5カ年度は激変緩和措置。 |
→ | (条件を厳格化し存置) 合併後9〜5ヵ年度は合併がなかったものと仮定して普通交付税の額を保障(合併年度によって優遇期間を段階的に短縮)。 さらに5カ年度は激変緩和措置。 |
出典:総務省資料等をもとに作成
実際の合併状況をみると、経過措置期間とされた2005(平成17)年度に駆け込み合併が相次いでおり、現行の新・合併特例法下での合併は50件程度にとどまっている。
北陸でも、4県全てで市町村数が10年前から半減しているが、そのほとんどが旧法下での合併となっており、現行法下での合併は2008年4月1日の新・村上市の1ケースにとどまっている。(図5)
図5;全国、東京都と北陸4県の市町村合併の状況
カッコ内は、平成11年3月末時点からの減少率
1998 | 2005 | 2009 | |||
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全国 | 3,232 | → | 1,821(▲43.7%) | → | 1,771(▲45.2%) |
東京都 | 40 | → | 39(▲ 2.5%) | → | 39(▲ 2.5%) |
新潟県 | 112 | → | 35(▲68.8%) | → | 31(▲72.3%) |
富山県 | 35 | → | 15(▲57.1%) | → | 15(▲57.1%) |
石川県 | 41 | → | 19(▲53.7%) | → | 19(▲53.7%) |
福井県 | 35 | → | 17(▲51.4%) | → | 17(▲51.4%) |
出典:総務省資料をもとに作成