北東アジアとの連携戦略

日本経済はアメリカからアジアへシフト。アジア・ゲートウェイ構想を主導するエリアに向けて北陸には地理的優位性を生かす戦略が必要だ。

柳井 雅也 (東北学院大学教授)

地理的優位性と港湾を活かして国際物流拠点の形成を

北東アジアと対峙するという点で、北陸の地理的優位性はしばしば強調されてきた。では北陸の地理的優位は北東アジアとの連携を進める上でどのように活かされるべきだろうか。

その答えの一つが北東アジアとの物流ネットワークの構築だ。日本と北東アジア各国との関係は深まり、貿易量はさらに拡大する。それを見据えて、物流の国際的な拠点圏域を目指すという戦略である。

今、世界的に海運が見直されている。海運の大量輸送性は、エネルギー効率が高く、二酸化炭素排出量も少ないため、地球温暖化防止の観点からも極めて優れている。また時間はかかるものの、鉄道などに比べて製品に対するダメージが少ない輸送法とされている。こうしたことからトヨタは日本国内において、敦賀港から直江津港を経由して秋田までの海上輸送を行っている。またヨーロッパ向けの輸送に関して、シベリア鉄道経由は輸送中の振動が製品に悪影響を及ぼす可能性があるとの結果から、海運が主になるとの見通しだ。

北陸地方には、新潟港、伏木富山港、金沢港、敦賀港等の港湾が整備されている。世界的に海運が見直されている中で、こうした港湾の集積は国際的な物流拠点圏域の形成にとって大きな力となるものだ。

北陸地方は三大都市圏に近接するという地理的な強みを持っている。新潟-東京、富山-名古屋、金沢-大阪はそれぞれ300kmほどの距離しかなく、内陸輸送を活用すれば三大都市圏は日帰り可能なマーケットとなる。これは北東アジアから運んできた荷物を、いち早く、しかも低コストで三大市場に展開できるということであり、他地域を上回る北陸の強みといえる。

しかし大量輸送を特色とする海運にとって、荷物の少ない北陸はそれほど魅力のあるエリアではない。釜山から金沢までは1日程度と距離は近いが、1回の航海で石川から富山、新潟と港を回って少しずつ荷物を積み降ろすので、新潟に着くまでには1週間程度かかってしまう。これでは大口の荷物が動く九州や太平洋側の港には勝てない。

ところが経済成長や中国市場の成長に伴って、日本と東アジアの物流には多頻度小ロット輸送へのニーズが高まっている。国内物流と同様に、市場のニーズに合わせて多様で多品種の商品をジャスト・イン・タイムで届けようという動きだ。スピードは結果として物流コストを下げることにもつながる。そのために迅速かつ低コストの物流システムの構築が急務となっている。

こうした動きの中で、通関手続きが早く港湾設備の整った地方港は、多少荷物が少なくともセカンドベストとして選ばれることになる。現状ということでは、いくつかの課題はあるが、大都市圏に近接するという北陸の地理的優位性を発揮すれば、セカンドベストとして北陸の港が東アジアとの物流の拠点港に選ばれる可能性は非常に高い。

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