北東アジアとの連携戦略

日本経済はアメリカからアジアへシフト。アジア・ゲートウェイ構想を主導するエリアに向けて北陸には地理的優位性を生かす戦略が必要だ。

柳井 雅也 (東北学院大学教授)

道路との連携で競争力を高めるとともに個性を活かした港づくりを進める

北陸の各港は高速道路のICから少し離れており、港から目的地までの内陸輸送の部分に時間やコストがかかってしまう。インランドデポのような拠点を整備しても、そこまでに時間がかかれば競争力は低下してしまう。例えば、高速道路を港の中にまで引き込んでしまえば、輸送時間は早くなるし時間を計算しやすくなる。その競争力は相当なものになる。

物流は総合的なものだから、港や拠点整備だけでは十分とはいえない。港と道路、空港と道路、そして物流の拠点などを連携させていくという取り組みが重要になる。

(図4) 北陸地方の港湾・空港から最寄りIC までの距離

●港湾
港湾 最寄りIC 距離 時間
新潟港 東港区 新新バイパス「東港IC」 約1km 約2分
西港区 新潟バイパス「紫竹山IC」 約5km 約10分
直江津港 北陸自動車道「上越IC」 約4km 約7分
伏木富山港 富山地区 北陸自動車道「富山IC」 約11km 約20〜25分
新湊地区 北陸自動車道「小杉IC」 約9km 約20分
伏木地区 能越自動車道「高岡北IC」 約8km 約20分
金沢港 北陸自動車道「金沢東IC」 約6km 約10分
北陸自動車道「金沢西IC」 約3km 約5分
敦賀港 北陸自動車道「敦賀IC」 約3km 約5分

(出所:聞き取り調査による)

●空港
空港 最寄りIC 距離 時間
新潟空港 日本海東北自動車道「新潟空港IC」 5km 10分
富山空港 北陸自動車道「富山IC」 4km 5分
小松空港 北陸自動車道「小松IC」 2km 5分

(出所:各空港ホームページ)

巨大で最先端の物流機能を備える韓国の釜山港や上海の洋山港は、集中的な投資が行われ、東アジアの国際ハブ港として整備が進められてきた。港湾のような社会基盤の場合、本来は一箇所(一港)に集中して投資や整備を進めるほうが効率的だ。

しかしすでに新潟、直江津、富山、金沢、敦賀など、ある程度の規模と能力を備えた港が点在している現状を変えることは困難だろう。したがって、既存の港が存在することを前提として、それぞれの個性化や連携、役割分担を考えるという取り組みが有効となる。その際のポイントは地域(地場)産業との連携や対応、地理的条件を含めた地域特性の反映である。

例えば、コマツの輸出戦略に連携した取り組みを進めている金沢港は北米航路に強い港と位置づける。また地理的条件や現在の定期航路などから、伏木富山港は大連に強い港、新潟港はウラジオストックに強い港とするといったように役割分担を行い、港の個性化を進めていく。同様に、首都圏、中部、近畿市場に強い港、空路を活用できる港などの役割分担も可能ではないだろうか。

各港が個性化しつつ連携を強めることによって、北陸地方はブロックとして港湾・物流機能が高まっていく。そして他の港湾都市との差別化と北陸としての総合力の発揮が可能となる。

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