北東アジアとの連携戦略

日本経済はアメリカからアジアへシフト。アジア・ゲートウェイ構想を主導するエリアに向けて北陸には地理的優位性を生かす戦略が必要だ。

柳井 雅也 (東北学院大学教授)

観光交流を促しながら北陸ブランドの発信と確立を

中国の人たちに「北陸」はあまり知られていない。温泉や雪、スキーといったことに関心を持っていても、それが北陸とは結びついていないのが現状だ。

上海や北京、香港だけでなく東北3省でもかなり富裕層が出現し始めている。こうした人たちを北陸の観光産業に取り込んでいけるのではないだろうか。ポイントは東アジアの人たちのニーズと北陸の資源のマッチングだ。台湾の人たちは雪を喜ぶ、韓国には2km以上のスキーコースがないので長いコースがあるスキー場を喜ぶといったことだ。

地域イメージは商品イメージやビジネスにも影響してくる。例えばスイスといえば時計、コーヒー、観光地といったイメージがあるが、観光地から発する美しい自然や水のイメージが時計は正確、コーヒーは美味しいといった評価につながっている。観光というのはそうした地域イメージや地域ブランドを形成する機能も持っている。

北陸も観光の拡大を通じて活性化を図るとともに、観光PRや体験を通じて北陸の地域イメージを発信するという取り組みを考えるべきではないか。例えば「北陸は日本の伝統の心が集約された地域」というメッセージを、観光に絡めながら発信し続ければ、北陸の地域イメージが確立し、北陸産の製品にもいい影響が生まれることだろう。観光も北陸と北東アジアの連携を進める上で重要な地域戦略なのだ。

整備された港を活用した国際物流拠点圏域へ、またビジネスや観光による人的交流の拡大へ。北東アジアの経済成長は、北陸の活力を高めるエネルギーだといえる。しかしそのエネルギーを未来へと進む力に変えるためには、仕組みやシステムが不可欠だ。日本海を挟んで向かい合うという地理的優位性をいかに活用・発揮していくのか。北陸もまた大きな転換期を迎えている。

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