北陸の地震被災と日本の課題

災害は時代の流れを劇的に転換させる。北陸の被災体験と震災復興活動がこれからの国土づくりを変える

平井 邦彦 (長岡造形大学教授、工学博士)

相次いだ北陸地方の地震災害 蓄積した情報や対応ノウハウ

北陸地方はここ3年の間に、中越地震、能登半島地震、中越沖地震と、マグニチュード6.8〜6.9(震度6強〜7)規模の大きな地震が発生した。いずれも激甚災害の指定を受けるほどの大きな災害だった。北陸地方がユーラシアプレートの東縁に位置することや断層の存在など、地震の原因や発生メカニズムの分析・解明が進んでいるが、過去にも昭和23年の福井地震、39年の新潟地震という大きな地震災害が発生しており、北陸は地震の活動期に入った地域の一つと考えられているようだ。

<北陸地域の主な地震災害>
地震名 発生日 震源地/規模 最大震度 主な被害
福井地震 昭和23(1948)年
6月28日
福井県北部
マグニチュード7.1
震度6
(福井市)
死者:3,769人
倒壊家屋:36,184戸
新潟地震 昭和39(1964)年
6月16日
新潟県粟島南方沖
マグニチュード7.5
震度6
(新潟市、村上市)
死者:26人
全壊家屋:1,960戸
中越地震 平成16(2004)年
10月23日
新潟県中越地方
マグニチュード6.8
震度7
(新潟県川口町)
死者:68人
負傷者:4,805人
能登半島地震 平成19(2007)年
3月25日
石川県能登半島沖
マグニチュード6.9
震度6強
(石川県七尾市、輪島市、穴水町)
死者:1人
負傷者:355人
中越沖地震 平成19(2007)年
7月16日
新潟県上中越沖
マグニチュード6.8
震度6強
(新潟県柏崎市、長岡市、刈羽村、長野県飯綱町)
死者:11人
負傷者:1,307人

(気象庁資料等から作成)

地震以外にも、北陸は地形的な特性から急斜面や急流河川が多く、地すべりや河川の氾濫といった自然災害が起こりやすい地域でもある。また日本有数の豪雪地帯であり、雪災害も数多く発生している。平成17〜18年の2年続きの豪雪とそれがもたらした被害は記憶に新しいところだが、中越地震よりも豪雪による死者数(152人)の方が多いという現実もある。

このように北陸地方は自然災害が発生する条件が多い地域であることは確かであり、実際に数多くの被災を経験している。それだけに、他地域よりも自然災害に備える技術や知恵が蓄積され、様々な場面で活用されている。例えば豪雪に対応する家屋は地震にも強い。新潟地震で萬代橋以外の橋が落下した反省から、新潟市内の橋はどれも充分な強度を備えている。湯沢、立山、白山での砂防の取り組みは、世界でもトップレベルの砂防技術を育んだ。

3年前の中越地震で注目された「エコノミークラス症候群」への対応や、コミュニティごとに集まる避難所生活、行政と企業、ボランティアが役割分担して取り組んだ被災判定や被災者支援等の活動など、様々な活動から学んだ知恵やノウハウは、中越沖地震において有効に活用され被災者に対するきめ細かなケアを実現した。

北陸地方には地震だけではない様々な災害体験とそこから学んだ知恵やノウハウがある。それは二次災害の予防や被害を最小限に抑えることに役立つものであり、減災社会に向けて全国で共有し活用すべきものである。

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