全国計画は国土審議会の計画部会が中心になって検討しており、平成18(2006)年11月に「中間とりまとめ」が公表された。これに対する意見募集(パブリックコメント)も終了し、平成19年中頃を目標に最終的な策定活動が進行している。一方、広域地方計画も各ブロックで準備が進んでおり、全国計画の策定後(閣議決定後)およそ1年(平成20年中頃)を目途に策定するという予定となっている。
(図1)国土計画制度の改革のポイント
(出所:国土交通省資料より編集部が作成)
中間とりまとめ、あるいは、まもなく公表される全国計画に対しては、次のような6つの観点から確認、評価していくべきだと考える。
地方分権推進委員会の第5次勧告において、国土計画行政は国主導で非常にトップダウン的であり、もっと地域の意見を反映する必要があるという指摘を受けた。これが国土総合開発法を改正する一因となっている。
国土形成計画では、地方が策定する広域地方計画が全国計画と対をなすものと位置づけられており、それぞれのブロックがどのような計画を策定するかが、日本の国土のありように関わる点で、その内容は大いに注目される。
法律の目的からも「開発」という言葉はなくなり、「整備」という言葉に置き換えられている。実は、これまでの5つの全総計画を分析してみると、オイルショック後に策定された3全総の頃から「開発」という言葉は使用頻度が低下している。
保全すべきは保全し、更新すべきは更新し、同様に開発が必要な部分はしっかりと開発(整備)するという考え方が、国土計画の基本的な考え方あるいは基調となってきている。
今回の中間とりまとめでも、「シームレスアジア」という言葉に代表されるように、国際化、特に東アジアについての記述が多くなっている。これまでの国土計画は日本という枠の中のことを考えてきたものが、時代変化をふまえて世界とのつながりというものを重視する方向へと変わっている。
特に日本の国際的な結びつきがアメリカからアジアへとシフトする中で、これまでの太平洋側に代わって日本海側が脚光を浴びる時代の到来も予想される。
少し専門的になるが、これまでの国土計画と国土利用計画法は十分に連携して機能しているとはいえない面がある。今回の法改正を契機に、現在の国土利用計画法を土地利用の実態や行政に合致させようという動きがあり、今後の動向が注目される。
これまでの国土計画は人口が増加を続けている時代に策定されたものであり、国や国土のあり方も人口増を前提として計画されてきた。日本が人口減少時代に入ったことをふまえて、今回の計画は当然のことながら人口減少の中での国や国土のあり方を示す計画が求められている。
国土の均衡ある発展(=地域間格差の是正)というのは、国土計画において一貫して取り組んできたテーマである。過去5回の全総では、いずれも大都市の過度な開発・発展を抑えて地方の振興を行おうという考え方が示されてきた。しかし、実際には都市と地方、あるいはブロック間での格差が生じており、拡大する動きもみられる。こうした動きに、国土形成計画が対応していくことが求められている。
(図2)全国総合開発計画の比較
全国総合開発計画(全総) | 新全国総合開発計画(新全総) | 第三次全国総合開発計画(三全総) | 第四次全国総合開発計画 (四全総) | 21世紀の国土のグランドデザイン(五全総) | |
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閣議決定 | 昭和37年 (1962年) |
昭和44年 (1969年) |
昭和52年 (1977年) |
昭和62年 (1987年) |
平成10年 (1998年) |
策定時の内閣 | 池田内閣 | 佐藤内閣 | 福田内閣 | 中曽根内閣 | 橋本内閣 |
背景 |
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目標年次 | 昭和45年 (1970年) |
昭和60年 (1985年) |
昭和52年からおおむね10年間 | おおむね平成12年 (2000年) |
平成22年から27年 (2010-2015年) |
基本目標 | 地域間の均衡ある発展 | 豊かな環境の創造 | 人間居住の総合的環境の整備 | 多極分散型国土の構築 | 多軸型国土構造形成の基礎づくり |
開発方式等 | 拠点開発構想 | 大規模プロジェクト構想 | 定住構想 | 交流ネットワーク構想 | 参加と連携 |
(出所:国土交通省資料より編集部が作成)