東京大学教授、工学博士
1948年愛媛県松山市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院博士課程(都市工学専攻)修了。長岡技術科学大学助教授、アジア工科大学(タイ)助教授、東京大学工学部助教授等を経て、1995年より同大学大学院教授。1998年より東京大学先端科学技術研究センター教授。研究分野は都市計画、国土計画、地域開発。国土審議会、産業構造審議会等の委員をはじめ、(社)日本都市計画学会会長や(財)日本地域開発センター理事長等の公職を歴任。主な著作に「都市再生のデザイン」(有斐閣)、「逆都市化時代」(学芸出版社)、「都市とは何か」(共著、岩波書店)等がある。
平成17(2005)年7月、「国土総合開発法」の改正案である「国土形成計画法」が成立し、日本の国土計画は新たな時代を迎えることとなった。
国土計画はいうまでもなく国土の利用、整備及び保全(=国土の形成)を推進するための総合的かつ基本的な計画である。今回の改正は、人口減少社会の到来、グローバル化の進展、地方分権改革の推進など、大きな社会変化の中で、これまでの計画体系・計画が新たな時代に合致しなくなってきたということで行われたものだ。今回の改正のポイントとして、国土交通省の資料では、1.国と地方の協働によるビジョンづくり、2.開発中心からの転換、の2点をあげている。
これまでの国土計画は国主導で策定する全国計画のみで、法律上は他に地方計画、都道府県計画、特定地域の計画をつくることができたが、実際には全国計画と特定地域計画の2つしか策定されてこなかった。「北陸地方開発促進計画」「首都圏整備計画」や都道府県の総合計画は、実は国土総合開発法に基づくものではなく、個別の法律や条例に基づいて策定されたものだ。
今回の改正では、国が主導して策定する「全国計画」と、ブロックごとに国と関係自治体等が協議して策定する「広域地方計画」の2つの計画を合わせて「国土形成計画」としている。つまり、国土計画にはっきりと地方計画が位置づけられたわけである。
またこれまでは「開発」という言葉が使用されてきたように、国土計画の基調は「開発中心」あるいは「量的拡大」にあったものが、「質的向上」「ストックの活用」を重視するなど、成熟社会型の計画へと大きく転換した。これに伴い、法律の題名は「国土総合開発法」から「国土形成計画法」へ、計画の名称も「国土形成計画」へと改められた。