北東アジア6カ国はFTA等の経済連携が進んでいないが、その経済規模は大きく(図1)、エネルギー、環境、食料問題など、国際社会・経済への影響力も計り知れない規模になっている。
図1 世界の経済統合地域の経済規模比較(2004年)
出典:外務省ホームページ。北東アジアデータは各国統計資料等を基に集計。
その一方で、北東アジアは多民族、多言語地域という特徴を持ち、さらに経済的な特徴として、国家間に大きな経済格差があり(図2)、特に環日本海地域は国家内でも経済格差に悩む地方(中国東北、ロシア極東など)の集合体であることがあげられる。このことが、時に歴史認識の相違を生んだり、FTA締結の障害にもなったりしている。
図2 北東アジア各国の経済格差(2005年)
出典:各国統計資料などを基に集計。
北東アジアの輸送ルートは、これまで整備の遅れや国境における不連続などの課題を抱えていた。しかし、中国東北部では東北振興政策の進展による国有企業改革、地域経済・財政の健全化等を通じ、国内外の資本を集めグローバルな生産基地として新たなスタートを切っている。弱点とされてきたロジスティクスにおいても、高速道路整備や配送サービスの導入等で徐々に改善されつつある。中国と同様に経済成長が続くロシアでも、自動車生産や消費財輸出などで日本や韓国企業が進出し、輸送日数が短いシベリア鉄道による輸送が再び脚光をあびている(図3)。
図3 北東アジア輸送回廊
このような中で、中国はこれまでのようにGDPの増加率を追求するだけでなく、深刻な環境問題への対応にも取り組み始めている。そのため、環境負荷の大きい企業やローテク企業の淘汰を狙った新「企業所得法」を成立させたほか、雇用安定化に向けた「新労働契約法」(2008年)も施行したところである。
韓国は、2005年の失業率は3.5%で2003年以降ほぼ横ばいであるが、非正規雇用の増大などの「格差問題」が生じており、経済の中長期的な安定を図る上での不安要因と見られている。
ロシアは1992年の価格自由化を契機として市場経済に転換したが、近年では豊富なエネルギー資源と原油価格の高騰等を背景に著しい経済成長を続けている。その間、制度やシステム面での改革が進み経済活動の多くが民間企業により行われ、貿易業務においても国家独占から企業間で行われるようになるなど、市場経済への移行はほぼ完了したといえる。
また、ロシア極東地方では「2013年までの極東・ザバイカル経済社会発展プログラム」が2007年8月に政府決定された。輸送部門、エネルギー部門を中心に総予算5,669億ルーブル(200億ドル超)を投入する計画で、連邦政府が4分の3の費用負担をすることから、これまでのプログラム以上の実現性が期待されている。