北陸地域における公共交通の課題と展望

次世代型の公共交通サービス導入によるまちづくり 富山ライトレール(LRT)の整備効果を検証する

自動車からライトレールに乗換える人も
自動車交通から公共交通への転換にむけて

他の交通手段から富山ライトレールに乗り換える人が増えたことも、利用客増加の要因であり、効果ともいえるだろう。富山ライトレール開業とともに廃止された路線バスからの転換に加えて、自動車からライトレールに交通手段を変更する人が増えたという調査結果もある。

そもそも富山市は自動車への依存率が高く、全国でもトップクラスの自動車利用県。交通手段別分担率でみると、自動車の分担率が約72%と中核都市圏でもトップだ。一方、公共交通機関の分担率は4.2%にとどまっていた(図7)。

図7 交通手段分担率(全目的分担率)

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(出典:「富山高岡広域都市圏パーソントリップ調査」富山県)

富山市は日常生活に自動車が欠かせないまちの一つというわけだ。市民の3割は「自由に車が使えない」という調査結果があり、さらにそのうちの半数は60代以上の高齢者だった。つまり、高齢者にとって、自動車への依存度の高い富山市は、いささか住みにくいまちということになる。高齢化の進行とともに、車が自由に使えない人はさらに増加するという予測もある(図8、図9)。

図8 車が自由に使えない人の実態

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※「自由に使える車がない人」とは、運転免許証がない人、自分専用の車がない人を指す。

(出典:「平成18年富山市の公共交通に関する意識調査」富山市)

図9 車が自由に使えない人の人口予測

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(出典:「富山市都市マスタープラン」)

また、富山市のまち構造の点からも、都心地区の空洞化が著しく、郊外への人口流出が深刻化していたこともあり、中心市街地活性化の起爆剤として、自動車交通から公共交通への転換は急務であった。

富山ライトレールの開業後に行われた調査によると、平日の利用客の6割はJRや路線バスからの乗り換えだが、自動車からLRTに乗り換えた人も12%、約600人いた。休日でも13%、700人が自動車からライトレールを利用しており、公共交通機関への乗り換えに大きな効果を発揮している(図10)。

図10 富山ライトレール利用者の以前の交通手段

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※JR富山港線の数値は平成17年10月2日に行ったアンケート調査、富山ライトレールの数値は平成18年10月5日に行ったアンケート調査によるもの。

(出典:「富山港線LRT化の整備効果調査」富山市、国土交通省)

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