中山間地域の地域づくり-過疎・自立・対策

「誇りの空洞化」で衰退する日本の農山村。格差是正と個性ある発展の二兎を追って、国内戦略地域として再生をめざすべきだ

小田切 徳美(明治大学農学部教授、農学博士)

農山村の未来が変わる「2010年問題」への注目

今、農山村をめぐって「2010年問題」が関係者の間で注目されている。

農山村に関係の深い3つの法律や制度、過疎法(過疎地域自立促進特別措置法)、合併特例法(市町村の合併の特例等に関する法律)、それから中山間地域等直接支払制度、これらがすべて2010年の3月で改定期を迎える。今後どうするかという議論が始まっており、2009年の夏から秋冬にかけて大きな争点となる。そして廃止を含めて、4月からは新たなスタートを切ることになる。このことを「2010年問題」と呼んでいる。

過疎法に関して言うならば、今、日本全国が人口減少局面にあり、しかも自然減になっている。過疎地域で人口が減少している時に、自然減になったら地域社会はおしまいだと言われていた。それが日本全体で起こっている。そういう意味では、過疎地域だけとりわけて人口減少ということを議論する根拠は薄れている。極論だが、日本全体が過疎地域というような表現もできなくない。

こういう状況下で、特に人口が激しく減少している地域―過疎地域―をどうするかという議論も、従来とは変わらざるを得ない。

大きな流れとして、過疎法はハードからソフトへという方向を示しながら継続されると見られている。しかしその向かうべきソフトに関する議論が十分ではない。例えば、これまでの過疎債はハード整備にしか認められない。道路や公共施設の整備で格差是正の効果は発揮したが、地域の個性や内発的発展という部分は弱かった。これがソフトも支援するとなった時に、今度は地域の資源を生かす、ビジョンを実現するといった目標や、他地域とは違う知恵が必要になる。こうしたことの議論が、各自治体を含めてまだまだ十分ではないように感じている。

中山間地域ほど合併によるサービス低下や格差の広がりが指摘される中で、最終的に1000程度の市町村数をめざして、どのような合併促進策が提示されるのかが注目される「合併特例法」。財政環境がさらに厳しさを増す中で、バラマキ政策ではないかという批判もある「中山間地域等直接支払制度」。来春に向けて2010年問題が次から次へと決着していくことになる。

中山間地域等直接支払制度を議論することは、集落をどうするのかを議論することに他ならない。同様に合併特例法は基礎自治体の役割を、そして過疎法は都市と農山村の関係を議論する絶好の機会となる。2010年問題にきちんと対応しようとすると、農山村の未来に関わる議論は避けては通れない。そして国内戦略地域としての位置づけや、その支援のあり方について、改めて国民的合意を築き上げる最高のチャンスでもある。

農山村の地域づくりや未来を左右する法律や制度の行方-2010年問題に、ぜひ注目し、議論に参加していただきたい。

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